研究課題/領域番号 |
15K07865
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
加藤 正 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (50382669)
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研究分担者 |
成田 紘一 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (20584460)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | TAN-1813 / リファガール / 全合成 / 抗腫瘍活性物質 / 分子標的治療薬 |
研究実績の概要 |
優れたPFTase阻害活性を有する TAN-1813 の全合成研究においては、昨年度までの検討結果を踏まえ、TAN-1813の全合成達成を目指して検討を行った。マレイミド窒素の保護基についてSEM基を選択し、マレイミドセグメントを合成した。次いで、フェニルチオ基を足がかりとした、ヨウ化サマリウムを用いたデカリンセグメントとのカップリング反応により目的とするカップリング体を得ることができた。カップリング体をデス-マーチン酸化することで、TAN-1813のすべての炭素骨格、不斉炭素および官能基を有する化合物の合成に成功した。最後に、全合成達成に向けて各種保護基の脱保護について検討を行った。しかしながら、マレイミド窒素の保護基であるSEM基の脱保護反応はデカリン環部のアリルアルコール部位の脱水を伴ってしまい不成功に終わった。
PI3K阻害剤であるリファガールの合成研究においては、昨年度見出したC8位メチル基の異性化反応を基軸とした類縁体合成を行った。その結果、合成した類縁体の中で、リファガールのC8位エピマーである 8-エピ-リファガールが天然物であるリファガールよりも優れたPI3K阻害活性を有することが明らかとなった。このようにC8位メチル基の立体化学が生物活性に与える影響を初めて明らかにすることができた。また、リファガールの生合成前駆体と考えられているシフォノジクトヤールBの全合成研究にも取り組み、これまでの知見をもとにその全合成を達成することができた。さらに、構造活性相関の解明を目的として、8-エピ-シフォノジクトヤールBの合成も行った。合成品の生物活性評価からシフォノジクトヤールBはリファガールと同等あるいはそれ以上のPI3K阻害活性を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TAN-1813の全合成研究では脱保護反応が不成功に終わったものの、適用可能な保護基について新たな知見を得ることができた。また、リファガールの合成研究では、昨年度開発した方法論を用いて類縁体の合成を行った。合成品の生物活性評価からリファガールの構造活性相関について新たな知見を得ることができた。さらに、リファガールの生合成前駆体であるシフォノジクトヤールBの全合成を達成し、4環性リファガン骨格の生物活性に与える影響についても明らかにすることができた。
以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
TAN-1813の合成研究では、これまでに得られた知見をもとに再度保護基についての検討を行い、合成の最終段階でも脱保護可能な保護基を見出すとともに全合成を達成する予定である。
リファガールの合成研究では、リファガールの類縁天然物であるコラリジクトヤールA,Bの合成法の確立を目指す。また、引き続き類縁体合成を行い、構造活性相関に関する知見を深め、より優れたPI3K阻害剤の開発を目指したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
TAN-1813の合成研究においては、前年度までに合成しておいた中間体を用い検討を行ったため、予定していたよりも試薬類への支出が少なかった。また、リファガールの生合成前駆体であるシホノジクチアールBの合成において、これまでの知見を活用することで、効率的に全合成経路の確立を達成することができたため、想定していたよりも試薬類への支出が少なかった。これらのことから未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はTAN-1813の合成研究において、保護基の検討および原料合成に試薬、溶媒等が必要なこと、また、リファガール類縁天然物であるコラリジクトヤールA, B の合成においても、新たな試薬、溶媒等が必要であることから、これらの支出に生じた未使用額を充当したいと考えている。
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