研究課題/領域番号 |
15K07973
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
沼澤 聡 昭和大学, 薬学部, 教授 (80180686)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高インスリン血症 / Nrf2 / 酸化ストレス / TRPA1 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病初期に認められる高インスリン血症は、その後の予後と密接に関係しているとともに、アルツハイマー型認知症や大腸がんなどのリスク因子にもなっている。しかし、高インスリン血症の分子機構は不明である。本研究は膵島細胞が酸化ストレスに高感受性であることに着目し、そのインスリン分泌における生理的意義を明らかにすることを目的とする。また、高インスリン血症を引き起こす分子実体として酸化ストレスに高感受性のTRPチャネルの役割を示すことにより、その病態生理学的側面を分子レベルで明らかにすることを目的とする。 平成27年度では、主に単離マウス膵島細胞を用いてグルコースやTRPチャネルアゴニストによる刺激に応答する反応を検討した。研究実施計画に従いマウス膵島の細胞外電位の測定するための実験条件について種々検討した。特にMEA電極への膵島の固定方法を再検討し、微弱な膵島細胞外電位の測定に一定の道筋をつけた。本法を用いて、今年度より本格的なデータ取得を行う。 一方、蛍光顕微鏡法による膵島細胞内Ca量の変化を検討し、酸化ストレス応答を制御するNrf2遺伝子の欠損動物では、グルコース刺激やTRPA1アゴニストのアリルイソチオシアネートによるCa応答が野生型に比べて顕著に生じることを明らかにした。この結果は、細胞内で生じた活性酸素が膵島に高発現するTRPA1を介してインスリン分泌を聖に制御する可能性を示している。現在TRPチャネル阻害剤を用いて、各チャネルの関わりに関して検討を行っており、酸化ストレス感受性TRPチャネルの役割の全容を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵島の細胞外電位測定をMEA電極法により測定を試みている。本法は一部で報告があるものの、一般的に行われている方法ではないため、電極への膵島の固定方法がデータ取得の大きなボトルネックとなった。改良を試みながら安定した結果を得るために鋭意努力しているが、全体の研究進行の遅れに繋がってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、前年度に引き続きin vitroでの酸化ストレス感受性TRPチャネルの役割を示すとともに、前糖尿病病変において膵島への4-ヒドロキシノネナール等の親電子性物質の蓄積が生じるかについてin vivoでの検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に生じた研究の若干の遅延により使用予定額を下回る支出となったが、概ね予定の範囲であるといえる。
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次年度使用額の使用計画 |
実験計画を予定通り遂行するよう努める。
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