ピロリ菌は胃粘膜傷害や慢性炎症を引き起こし、これを基盤として胃癌の発生に関与することが知られているが、ピロリ菌、特にその病原因子 CagA を持つピロリ菌が強い粘膜傷害作用や炎症惹起作用を示す分子メカニズムには不明の部分が多い。本研究において我々はCagAが胃粘液分泌を制御する蛋白質と直接結合することにより、粘液分泌過程を阻害することを発見した。この結果から、CagA を持つピロリ菌が粘液分泌を阻害し、これによって塩酸やペプシンから胃粘膜を守る粘液層の形成が損なわれ、粘膜傷害から胃炎、胃潰瘍、さらに胃癌へと進展する可能性が示唆された。
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