アレルギー性喘息時の気管支平滑筋過敏性に焦点を当て、親世代 (P) 群の気管支平滑筋におけるエピゲノム変化について検討を行った。雄性BALB/cマウス (7週齢) を用い、ovalbumin抗原にて感作、追加感作および抗原反復吸入チャレンジを行うことにより気管支喘息モデルマウスを作製した。これら動物の気管支平滑筋組織よりゲノムDNA や total RNA の抽出、あるいはタンパク質サンプルを調製して、実験に供した。喘息群の気管支平滑筋において、RhoA タンパク質発現の著明かつ有意な増加が認められた。しかしながら、RhoA プロモータ領域の DNA メチル化レベルに変動は認められず、少なくとも DNA メチル化を介する転写調節には変化がないことが明らかとなった。一方、喘息群の気管支平滑筋において miR-133a 発現レベルが有意に低下しており、喘息時に miR-133a による RhoA 翻訳制御機構が抑制され、これにより RhoA タンパク質 up-regulation が引き起こされることを明らかにした。さらに、lncRNA の一種 Malat1 発現の増加が認められ、気管支平滑筋細胞においても Malat1 が miR-133a に対して sponge 的役割を担っている可能性を示唆した。培養ヒト気管支平滑筋細胞へのIL-17A処置により、喘息群の気管支平滑筋と同様の変化が観察された。したがって、これら RhoA タンパク質発現調節を取り巻くエピジェネティック変化に、アレルギー時に増加する Th17 サイトカインが一部関与している可能性が示唆された。
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