研究課題
1.代表的膜受容体であるムスカリン受容体(mAChR)の内、M1サブタイプは中枢神経細胞では細胞内にも存在し、機能していることを発見した。他のサブタイプ(M2‐M5)は細胞膜のみに局在したが、M1サブタイプのC末に置換すると、M2‐M5サブタイプも構成的に細胞内に分布するようになり、M1サブタイプC末が細胞内分布に重要な役割を演じていることが示唆された。point mutationの研究から、M1サブタイプC末のトリプトファンを含むモチーフが細胞内分布に関与していることを明らかにした。抗体を用いて細胞膜のM1サブタイプを標識した後 細胞を37℃に戻すと、標識した膜のM1サブタイプはアゴニスト刺激なしでも急速に細胞内に移動し、細胞膜から消失した。この結果から、M1サブタイプの細胞内分布は、細胞膜と細胞内の平衡状態がインターナリゼーション側に優位に傾いている結果であると考えられた。さらに、M1サブタイプのインターナリゼーションは、dynamin、clathrinおよびadaptor protein 2に依存していることも明らかにした。2.細胞内M1サブタイプを刺激する機構として、親水性の内在性AChを細胞内に積極的に取むACh transporterの存在を考えた。事実、ラット大脳皮質、線条体、海馬、小脳の切片は、非可逆的AChエステラーゼ(AChE)阻害薬存在下で3H-AChを有意に取り込んだ。しかし、この取り込みは心臓や肝臓、腸など末梢組織では観察されなかった。3.超微量表面潅流装置を開発し、脳切片からの3H-ACh遊離を観察した。そして、シナプス内ACh濃度はAChEだけでなく、ACh transporterによっても調節されていることを明らかにした。本研究は、中枢における新規コリン伝達機構を明らかにしたもので、高次脳機能の解明に繋がる結果と思われた。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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