研究課題
本研究では先ず、Sema4A欠損樹状細胞の抗原提示能障害がどの段階に依存するのかについて検索を行った。はじめに、樹状細胞のリンパ節への遊走能を検証した。In vivo FITC-isomer skin painting assayを用いてSema4A欠損樹状細胞と野生型樹状細胞の遊走能を比較したところ、これらに差は見られなかった。次に、蛍光色素をコンジュゲイトしたオボアルブミン(OVA)を用いてSema4A欠損樹状細胞と野生型樹状細胞の抗原貪食能を比較したところ、これらにも差は見られなかった。更に、抗原提示に必須となる主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex; MHC)およびその共活性化分子について発現量を比較したところ、MHCクラスI分子、MHCクラスⅡ分子、CD40、CD80、CD86、ICAM-1のいずれについても発現量の差異は認められなかった。これらの結果から、Sema4A欠損樹状細胞は、抗原を貪食し、リンパ管を経由しリンパ節に遊走するまでの過程には異常を来さず、リンパ節に到着した後にリンパ球とコンタクトする過程ないしその後において異常を来している可能性が高いことが示された。次に、Sema4A欠損樹状細胞および野生型樹状細胞を検体として、プロテオミクス技術を用いてSema4A欠損樹状細胞において発現の低下した分子について網羅的に検索を行ったところ、複数の有望な分子がスクリーニングされた。Sema4A樹状細胞から分泌されるエクソソームの総量については、細胞上清を用いたウェスタンブロットの結果から異常が見られないことが同時に確認できており、Sema4A欠損樹状細胞における抗原提示能障害は、分泌されるエクソソームの中に、スクリーニングされた分子のいずれかが著減していることが原因である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
樹状細胞におけるSema4Aが機能していると考えられる局面を特定できた。また、Sema4Aの機能を介していると考えられる分子について、複数の有望なものをスクリーニングできた。
スクリーニングされた候補分子のうち、Sema4Aの機能に直接関連するものを確認する。その後、Sema4A依存性の小胞輸送の可視化し、Sema4A欠損樹状細胞において候補分子を含有した小胞がうまく分泌されないことを証明する。また、候補分子を含有する小胞を直接補ってやることによる、疾患に対する治療実験も同時に行っていく。
本年度の研究においては、購入済みの一般的な試薬のみから施行可能なものが多く含まれていた。
引き続き、抗体をはじめとする物品費を中心に、研究費に充てていく。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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