研究実績の概要 |
プラセボ効果は全ての医薬品に存在し、薬効の大きさを決定づける因子の一つである。発現機構は、過去の経験や様々な情報により薬の効果が条件付けられると、薬への期待が高まりプラセボ効果が引き起こされることに基づく(Finniss et al, Lancet, 2010)。これまで脳活動とプラセボ効果の研究が進んでいたが、最近10年で、脳内化学伝達物質の遺伝子多型でプラセボレスポンダーとノンレスポンダーを区別するプラセボーム研究が台頭している。さらにプラセボームには人種差がみられる。欧米では研究が進んでいるが、日本での報告は無く、大きな遅れを取っていた。我々はカフェインとプラセボ(乳糖)の二重盲検比較試験を行い、5-HTT(Serotonin transporter)のlong allele homo-genotypeを持つ被験者においてプラセボ効果が高く、脳前頭前野の特定部位の活性が高いことを見出し、論文発表した(Isawa et al., Pharmazie, 2017)。一方、脳内化学伝達物質の中でも、特にCOMT (Catechol-O-Methyltransferase)遺伝子多型がカウンセリングやプラセボ効果との関連性が高いという報告がある(Hall TK et al., PloS ONE, 2012)従って、5-HTTだけではなくCOMTも加え、さらに規模の大きい臨床試験を目指すこととした。プラセボ効果をより明確にするために、全ての被験者は、カフェインの眠気防止作用の説明を受けるが、乳糖(プラセボ)を服用するという工夫をし、慶應義塾大学医学部倫理委員会ならびに薬学部倫理委員会の承認を得た。パイロット的な臨床試験として9例で行った。 プラセボ効果の変更要因について、2000年以降に承認された睡眠薬の文献調査を行い、学会発表を行った(日本薬学会、2018年3月)。
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