研究課題/領域番号 |
15K08660
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研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
西郷 勝康 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (20304107)
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研究分担者 |
炬口 真理子 姫路獨協大学, 薬学部, 准教授 (10379430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 好中球 / 細胞外トラップ / へミン / エンドトキシン / シトルリン化ヒストン / フローサイトメトリー |
研究実績の概要 |
好中球細胞外トラップ現象(NETs)は、強力な抗菌作用以外に、肺を始めとした組織障害や敗血症、血栓症、腫瘍の転移、動脈硬化等、多岐にわたり影響を及ぼす。この現象の発現を、動的にとらえることは臨床的な意義が大きいと考えられるが、適切な臨床検査法は確立されていない。そこで、in vitro およびin vivo検討を通して、臨床検査として応用可能な方法の確立について検討することを目的としている。 In vitro検討では、純化好中球にNETsを誘導し、その上清中に含まれる放出DNAを、ヌクレアーゼ処理後に定量する方法を確立した。この方法を用いて、陽性コントロールとして用いられるPMA(フォルボールエステル)に加え、これまで検討して来たヘミン(三価鉄含有ヘム)の効果を検討した。いずれも定量的に観察可能であり、さらに少量の過酸化水素の存在で、ヘミンの場合はNET形成能が格段に増強されることを確認した。マウスのin vivo検討、エンドトキシン肺障害モデル、では、血漿中のヒストンおよびミエロペロキシダーゼ定量を用い検討した。血液検体での変化は捉え難いが、肺洗浄液ではNET形成に応じて増加することが確認できた。 ヒトにおける臨床検査としての可能性をを考え、フローサイトメーターを用いた定量法を検討している。浸透圧変化を応用し、NET形成後の好中球を集団として捉える可能性について詳細に検討中である。速報はすでに2016年日本血液学会において報告した。今後、自動血球計数装置への応用を視野に検討の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄キレート剤(デフェラシロックス)が、in vitro検討では、活性酸素種やNET形成を抑制することを報告してきた。肺障害マウスモデルでのNETを伴う障害が、鉄キレート剤(デフェラシロックス)前処理により明らかに改善することが確認できた。2017年6月の日本血栓止血学会において報告可能である。論文化が可能な状況となっている。 In vitroNET形成の定量法確立については、Sytox Greenを用いたプレート法で可能であることを確認し、ヘミンによる NET形成が酸化ストレスの存在で増強することが確認された。またヘミンによるNET形成は、NADPHオキシダーゼ依存性であること、トル様受容体を介するものではないことなどを明らかにし、2016年の日本臨床検査医学会において報告した。論文化し現在投稿中である。 フローサイトメトリー法については、種々のクラスター形成の可能性について検討したが、浸透圧変化を導入する方法に可能性があるとの感触をうけており、上記の定量法との相関等について検討中である。今後は臨床検体での変化の可能性についても検討していくべく、計画中である。
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今後の研究の推進方策 |
エンドトキシン肺障害マウスモデルでは、NETが関与していることを確認し、デフェラシロックスがNET形成を阻害すると同時に肺障害を軽減させることを明らかにした。他の研究グループでは、リコンビナントトロンボモヂュリンが血小板存在下でのNET形成を抑制するとしており、マウスモデルで検討を予定している。なお、すでに我々が報告したように、好中球単独でのNET形成にはトロンボモヂュリンは影響しない。具体的には、エンドトキシン気管内投与にて肺障害を誘発するモデルにおいて、エンドトキシン処理前および処理後のいくつかの時間において、トロンボモジュリン製剤(旭化成より供与をうけている)を腹腔内投与することによる肺障害改善効果を確認する。この際、血液中および肺洗浄液中の細胞分析、形態解析、およびNETs解析としてのヒストンおよびミエロペリキシダーゼ定量を行う。肺の組織学的検討では、免疫染色によりNETsの関与、増減を評価する。 プレートを用いた定量法は安定性もよく、NET形成の詳細を検討する上で有用である。現在、短鎖脂肪酸による影響について検討を開始しているが、興味深いデータが得られており、さらに詳細に検討したい。 フローサイトメトリーでの定量法については、浸透圧変化法で応用可能と考えられるが、他の定量法との総相関性等さらに詳細な検討を行い、その特徴を把握する必要がある。今後は臨床検体での変化の可能性についても検討したい。さらに自動血球計数装置への応用を同時に検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究用試薬の購入時期の関係で次年度使用額が発生した。いくつかのNET計測やフローサイトメトリー試薬をすでに購入しつつある。今後免疫染色用の抗体試薬も購入予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
実験の進捗にあわせ、順次購入の計画である。
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