研究実績の概要 |
福岡県久山町の2007-2008年の循環器健診を受診した65歳以上の住民のうち、認知症のない1,187人を平均4.8年間追跡し、血糖関連バイオマーカーとアルツハイマー病(AD)発症との関係を検討した。追跡期間内に116例がADを発症した。性・年齢調整後のAD発症率はグリコアルブミン(GA)/HbA1c比レベルとは有意な正の関連(傾向性p<0.01)、GAレベルとは弱い正の関連(傾向性p=0.06)を示したが、HbA1cおよび1,5-アンヒドログルシトール(AG)レベルとは明らかな関係を認めなかった。認知症の関連因子で多変量調整後もGA/HbA1c比レベルとAD発症の間に有意な正の関係を認めた(傾向性p=0.01)。さらに正常耐糖能群では、ADに対するGA/HbA1c比高値群のハザード比(HR)は低値群に比べ有意に高く(HR 1.8、p=0.03)、糖代謝異常群でも同様の傾向にあった(HR 1.7、p=0.07)。一方、HbA1c、GA、1,5-AGでは、糖代謝異常の有無にかかわらずAD発症との間に有意な関連は認めなかった(いずれもp>0.1)。各血糖関連バイオマーカーレベルと糖代謝異常との間に交互作用は認めなかった。地域住民高齢者において、GA/HbA1c比はAD発症を予測するうえで有用なバイオマーカーであることを明らかにした。この研究成果は、平成29年の第60回日本糖尿病学会年次学術集会で発表するとともに欧文誌に受理・掲載された(J Clin Endocrinol Metab 102: 3002-3010, 2017)。
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