研究課題/領域番号 |
15K09260
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高畠 義嗣 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30403075)
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研究分担者 |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00379166)
高橋 篤史 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (10704786)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / 近位尿細管 / 脂肪毒性 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
【目的】過剰な脂肪摂取は細胞傷害や炎症を惹起(脂肪毒性)。遊離脂肪酸の酸化にATP産生を依存している腎尿細管への脂肪毒性については不明な点が多い。オートファジーはリソソームにおける細胞質成分分解の総称であり、細胞恒常性維持や飢餓応答に寄与する。本研究では脂質負荷が腎尿細管オートファジーフラックスへ与える影響を評価し、脂肪毒性・脂質代謝における腎尿細管オートファジーの役割について検証した。 【方法及び結果】近位尿細管培養細胞にパルミチン酸(PA)を負荷すると、オートファゴソームの形成促進を認めるもオートファジーの基質であるp62蛋白凝集塊の蓄積を認め、PAはオートファジー経路の後期段階を抑制した。電顕にてリソソーム内に消化不良オルガネラ蓄積を認め、LysoSensorを用いた観察にてPAによるリソソーム酸性化不良が判明した。次にオートファゴソーム可視化マウス(GFP-LC3 マウス)に対し2ヶ月間HFD負荷を行い、自由摂取あるいは24時間絶食、クロロキン投与有あるいは無の条件下で評価した。HFD群腎尿細管では自由摂取下でオートファジー活性化が見られる一方、ND群で見られる絶食に対するオートファジーフラックスの亢進が欠如していた。HFD群の腎尿細管にはリソソーム膜蛋白lamp1 陽性の空胞形成が観察され、内部にはGFP陽性リン脂質が蓄積していた。以上より過剰脂質蓄積による機能不全リソソームがオートファジーフラックス障害につながることが示された。次に近位尿細管特異的オートファジー不全マウス(KOマウス)及び野生型マウスに対しHFD負荷を行ったところ、KOマウスでは尿細管ミトコンドリア機能低下が増悪し、マクロファージ浸潤とインフラマソーム活性化を認めた。 【結論】HFDによりオートファジーへの依存性が高まるが、リソソーム機能障害からオートファジーがスムーズに機能せず、ミトコンドリア機能低下も相まって虚血による腎障害増悪につながることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前に予定した内容のうち、平成28年度の予定の一部(オートファジー不全マウスへの高脂肪食負荷の解析や脂肪負荷によるミトコンドリア傷害とそれに対抗するオートファジーの役割)まである程度踏み込んで実施できた。一方オートファジー可能(あるいは不全)下腎尿細管培養細胞での脂質負荷後のメタボローム解析に関しては方法の確立にやや手間取っており、停滞している。
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今後の研究の推進方策 |
●オートファジー可能(あるいは不全)下腎尿細管培養細胞での脂質負荷後のメタボローム解析に関しては方法を確立したうえで、予定通り遂行したい。 ●予定では化合物ライブラリーを用いて、腎の脂質毒性を解消できるようなオートファジー活性化剤を同定する予定であったが、これと並行してすでに臨床使用されている薬剤を使用する計画を立てている。 ●脂質負荷とは反対に飢餓状態においては、オートファジーが脂肪滴を分解するリポファジーが生じるとのプレリミナリーな結果を得ている。当初の計画になかったこの点を究明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付していただいた額と実際に使用した額に些少な誤差が生じたためで、ほぼ当初の実験計画通り遂行できています。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の実験計画から新たに追加・派生した計画(飢餓状態における腎リポファジーの探索)に充当する予定である。
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