研究課題/領域番号 |
15K09325
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
古屋 徳彦 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50401188)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / NBIA / 鉄代謝 / リソソーム / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
稀少疾病である脳内鉄蓄積を伴う神経変性症候群(NBIA)はジストニア、パーキンソニズムなどに加え高次機能障害を伴う遺伝性神経変性疾患であり、大脳基底核に鉄が沈着することが特徴とされるが、その発症機序は不明である。現在までに報告されているNBIAの原因遺伝子は①ミトコンドリアにおける補酵素A(CoA)の生合成に関与するもの(PANK2、COASY)、②リン脂質の代謝に関わるもの(PLA2G6、FA2H)、③鉄代謝に関与するもの(FTL1、CP)、④オートファジー・ライソソームに関わるもの(WDR45、ATP13A2)、⑤機能不明なものに大別出来る。本研究課題は、細胞内大規模分解系であるオートファジーが細胞内鉄代謝に重要な役割を持つことに着目し、NBIA原因遺伝子群の機能解析をオートファジーとの連関に注目して行うことを目的としている。 NBIAの原因遺伝子の一つでありフェリチン軽鎖をコードしているFTL1をノックダウンした細胞では、鉄キレート剤処理により誘導されるオートファジーによるフェリチンの分解が抑制され、ベルリンブルー染色により染色される3価鉄の蓄積が認められた。この結果はFTL1ノックダウンによりフェリチン複合体形成に破綻が生じ、鉄不足時においてオートファジーを介した鉄代謝が正常に働かなくなることを示している。 また、CoAの生合成に関わるNBIA原因遺伝子PANK2およびCOASYのノックダウンにより、リソソームの増加、富栄養状態でも誘導される基底レベルのオートファジーの低下が起こることを見出した。この表現型に関わる分子機構については現在解析中である。 以上のことから、少なくともNBIA原因遺伝子の一部がオートファジーと密接に関係していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度はNBIA原因遺伝子群のノックダウンを行ってきた。その一部に関しては前述したような表現型が認められた。また、その他のものに関しても現在解析中であり、当初の予定通りH28年度中も解析を継続する。また、FTL1、PANK2に関してはノックアウト細胞の作成を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで予定通り順調に研究が進んでいるため、今後も当初の計画通りに研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は本研究課題の初年度ということで、実験に使用する機器や消耗品などを調達するのにより多くの予算を計上した。また、計画していた国際学会に参加しなかったことから、収支上は少額の残予算が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越す金額は約四万円と少額なことから、消耗品費として次年度の助成金と合わせて使用する。
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