研究実績の概要 |
C57BL/6のbackgroundを持つ、8週齢の野生型(WT)及びS1P3ノックアウト(KO)マウスに対し、第1日に卵巣摘出術(OVX)およびsham手術を行い、第28日に大腿骨を回収、pQCTにより骨密度を測定した。OVX群においても、sham群においても、S1P3-KOマウスはWTマウスより骨幹端部の骨密度が有意に低いことが確認された (WT vs KO: sham群 419.9±25.4 mg/cm3 vs 405.8±24.9 mg/cm3, p<0.001; OVX群 363.0±31.7 mg/cm3 vs 332.5±9.2 mg/cm3, p=0.028)。そのS1P3-KOによる低下の割合は、sham群(3.4%)よりOVX群(8.4%)において大きい傾向があった。皮質骨についても同様の傾向があったがその差は有意ではなかった(WT vs KO: sham群 1077.4±15.6 mg/cm3 vs 1086.8±35.5 mg/cm3, p=0.067; OVX群 1070.6±22.1 mg/cm3 vs 1052.8±14.2 mg/cm3, p=0.14)。 WTマウスおよびS1P3-KOマウスの大腿骨から骨髄由来細胞を回収し、M-CSFによる刺激を行い、骨髄由来マクロファージ(BMM)を作製した。Osteo Assay Surface (Merck KGaA, Darmstadt, Germany)にBMMを散布し、第1日にM-CSFとRANKLによりosteoclastへの分化を誘導し、同時に段階的に濃度を変えたS1Pによる刺激 (0, 0.1, 1, 5, 15 microM) を加え、第7日において骨吸収面積を比較した。S1P低濃度(0-1 microM)ではWT、KOとも有意な変化を認めなかった。高濃度S1P(5, 15 microM)を加えると、濃度依存的に骨吸収面積が低下した (S1P無添加時を100%として、S1P 5 microM で WT 50% vs KO 39%、S1P 15 microM で WT 9% vs KO 3% )。WT群、S1P3-KO群とも、高濃度S1Pによる骨吸収の低下がみられたが、S1P3-KO群においてS1P刺激による骨吸収低下が強い傾向があった。これはS1P-S1P3シグナルによる破骨細胞活性の抑制作用を示唆するものと考えられた。
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