研究実績の概要 |
平成30年3月末日、本試験には現在49名が参加した。 参加者の特徴は次のとおりである:年齢 50.5±14.8歳;性別 男性37名(74.0%);罹病期間 23.7±15.7年;陽性症状陰性症状評価尺度総点 85.4±20.4(陽性症状21.8±5.4、陰性症状22.4±7.0、総合精神病理41.2±11.4);服用薬剤 リスペリドン12名(4.7±3.2mg/日)、オランザピン34名(14.9±5.7mg/日)、パリペリドン3名(9.0±3.0mg/日)。 1名は研究参加中に幻聴を経験しなかった。幻聴の持続時間、頻度を、抗精神病薬血中濃度の推定ピーク値またはトラフ値を含む時間帯(3時間)の間で、t検定を用いて比較したところ、いずれも、ドパミンD2受容体遮断ピーク時間帯とトラフ時間帯で統計学的に有意な差はなかった(持続時間、ピーク21.8±30.3分 vs. トラフ27.3±31.3分;頻度、ピーク0.36±0.50回 vs. トラフ0.45±0.52回)。 また、各時間帯に幻聴を経験した患者の割合をカイ2乗検定で比較したところ、18-21時の時間帯で有意に好発していた(75.5%, P<0.05)。 解析の結果は、仮説を支持するものであり、統合失調症において、幻聴の出現と消褪は1日単位で見た場合は、必ずしも抗精神病薬による脳内ドパミンD2受容体遮断と関連はなく、むしろ概日リズムの存在が示唆された。つまり内因性ドパミンの日内変動も考慮する必要があるものの、統合失調症の急性期治療の後に精神病症状が残存している場合、急性期同様の持続的なD2受容体遮断が必要ではなく、概日リズムに注目した治療が有効である可能性を明らかにした。(投稿中)
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