研究課題/領域番号 |
15K09998
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
笈田 将皇 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (10380023)
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研究分担者 |
宇都 義浩 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (20304553)
中田 一弥 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (70514115)
吉見 陽児 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 講師 (70609362) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 時間放射線生物学 / 免疫放射線療法 / 生物物理学的計算モデル / 放射線感受性 / 最適化 |
研究実績の概要 |
本研究では,免疫細胞と放射線増感剤併用における細胞放射線感受性および低酸素細胞への放射線増感特性について評価し,臨床応用が可能な免疫放射線増感剤の創出ならびに時間放射線生物学モデルに基づく線量評価と治療計画最適化の構築を進めている.今年度は,前年度に引き続き,1)紫外光による免疫細胞と増感剤(酸化チタンナノ粒子)の殺腫瘍効果と作用機序を解明することを目標とし,A549細胞,EMT6/KU細胞の評価および時間生物学的な特性の評価とともに計算モデルの構築を行った. 基礎実験では,腫瘍細胞に免疫細胞の添加をした際の共培養条件および増感剤(酸化チタンナノ粒子:p25)の紫外光による殺腫瘍効果について検討した.また,時間放射線生物学的モデルによる計算シミュレーションでは,放射線治療装置の物理特性および生物学的応答因子を考慮し,IMRT治療計画における線量分割,照射スケジュール,線量不均一性,細胞不均質性に伴うTCP/NTCPの変化から治療効果予測に関する詳細な考察を行った. 免疫細胞との共培養条件の最適化に関する検討と免疫細胞の貪食活性化能評価を行った結果,A549細胞では増感剤の有無にかかわらず紫外光照射で死滅し,またEMT6/KU細胞では変化はみられなかった.これより,紫外光照射および増感剤の殺腫瘍効果と免疫細胞による貪食能が相互に働くことが示唆される知見が得られた.計算シミュレーションによる治療効果予測では,週5回照射では中分割照射群で良好なTCP/NTCPが期待された.また週6回照射,週7回照射では多分割照射においてTCP/NTCPの改善が示唆された.次年度の研究では,エックス線に対する増感剤併用時の免疫細胞応答や機序解明を行い,臨床治療計画における生物学的パラメータの詳細な影響因子と組み合わせた検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画において目標としていた最適な免疫細胞の共培養条件の導出および酸化チタン(ナノ粒子)を投与した低酸素腫瘍細胞(EMT6/KU)に対する紫外線殺腫瘍効果の一部評価に関して技術的課題が見つかったため,前年度から研究遂行がやや遅れる状況となった.研究分担者と速やかに協議し,次年度内に遅れている実験も含めて実施する予定である.一方,研究責任者が主とする免疫応答を想定した時間放射線生物学的モデルの検討では,放射線治療装置の物理特性および生物学的応答因子を考慮し,IMRT治療計画における線量分割方法,線量不均一性,細胞不均質性に伴うTCP/NTCPの変化の算出・評価を含めた治療効果予測に関する詳細な考察を行い,入念に解析を行った.これらの解析結果から,免疫細胞を添加した際の放射線応答を予測可能とする基盤モデルを整備し,臨床応用を目指したシミュレーション環境の構築がなされたため,当該研究の遂行に支障はないと考える. 研究成果に関する報告では,過去の実験結果を踏まえた計算シミュレーションで詳細な考察を行ったほか,免疫放射線療法における放射線増感剤の効果予測について言及した.これらの結果については,国際学会発表および論文投稿に向けて,現在準備中である.また,従来のLQモデルの適用性に関する検討についても追加の細胞実験での検証とともに,次年度に向けて順次報告する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
免疫細胞と共培養させた腫瘍細胞および正常細胞に対する紫外光および放射線の照射に及ぼす影響などの基礎研究については知見が少ない状況であり,免疫分野の専門家と議論しながら当該研究を遂行するとともに,免疫細胞,腫瘍細胞の種類によって様々なデータが蓄積可能であることから,追加実験による原因課題の究明ならびに計算モデルの修正に向けた検討を行う予定である.また,臨床応用に向けた実際の患者症例をモデルとして放射線治療計画の最適化について考察を行い,副作用出現率の予測として正常細胞での評価にも言及したいと考えている.また,基礎研究と平行して,回復や再増殖の影響が大きい部位に対する放射線治療に着目して,空間物理的線量分布,時間放射線生物学的な影響,免疫療法を考慮した次世代の放射線治療技術開発を目標としている.基礎実験およびシミュレーションの実施環境は研究責任者および研究分担者の研究室において整備されており,各研究室に所属する学部生は部分的な研究課題として,また博士前期課程在籍の大学院生には解析作業の協力体制があり,効率的な研究を遂行ことができる状況にある.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に時間生物学的な特性の評価を行い,計算モデルを構築しているが,免疫細胞と増感剤の殺腫瘍効果と計算モデルの構築において,細胞の放射線感受性評価に関する技術的課題が見つかったため,追加実験による原因課題の究明ならびに計算モデルの修正に向けた検討を行うこととした。このため,修正モデルの解析と発表を次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい.
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