研究課題/領域番号 |
15K10185
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (70586859)
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研究分担者 |
藤田 逸人 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40611281)
坂井 寛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80611665)
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵臓癌 / 繊維芽細胞 / 膵星細胞 / 転移 / 播種 |
研究実績の概要 |
近年の癌研究の知見では、癌細胞だけでなく周囲の微小環境や癌間質相互作用の重要性が注目されており、特に膵癌は豊富な間質構造を有しているため、その重要性は高い。 本年度は、コラーゲンを用いた3Dモデルによって膵癌細胞と膵星細胞の浸潤を観察することに成功した。このモデルで、膵星細胞の浸潤が癌細胞の浸潤を先導していることを、経時的な観察により明らかにした。また膵星細胞は浸潤する際に周囲のコラーゲン線維を浸潤方向にリモデリングしていた。膵星細胞は基質のリモデリングを行い、線維配列を変化させることで癌の浸潤を促進している可能性が示唆されることを学会で報告した。 また、マウスの膵臓への同所移植と肝転移巣からの癌細胞培養を繰り返すことによって、高肝転移膵癌細胞株を作成し、高転移株と親株とを比較する網羅的解析の結果から高転移株での発現低下を示すマイクロRNA-5100を同定した。このマイクロRNA-5100を強制導入した癌細胞は、増殖能・遊走能・浸潤能の低下を認め、膵癌肝転移に関わるマイクロRNAと考えられることを原著論文で発表した。 さらに、膵癌細胞の播種に関して検討を行うために、腹膜を覆い播種形成に関与が疑われるヒト腹膜中皮細胞を腹水より複数株樹立した。この細胞は継代を重ねることで増殖能が著明に低下するため、レンチウイルスによってhTERTおよびSV40 Large Tを導入し、不死化したことも確認した。ヒト腹膜中皮細胞との間接・直接共培養により膵癌細胞の遊走能・浸潤能は増強され、膵癌の腹膜播種形成において、ヒト腹膜中皮細胞が重要な役割を果たしている可能性が示唆されたことを学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌の浸潤・転移に関して、膵星細胞は基質のリモデリングを行い、線維配列を変化させることで癌の浸潤を促進している可能性が示唆されることを報告し、その基質リモデリングに関与する因子の検討を進めている。高肝転移株の作成と網羅的解析による報告を行うとともに、腹膜中皮細胞が膵癌の腹膜播種形成に重要な役割を果たしている可能性を学会で発表し更なる研究を進めており、おおむね順調に経過しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
膵星細胞は基質のリモデリングを行い、線維配列を変化させることで癌の浸潤を促進している可能性が示唆されることを報告しており、その基質リモデリングに関与する因子の検討を進めていく。さらに、播種に腹膜中皮細胞が重要な役割を持つことが示唆されたため、間質細胞との関連も含めて検討を進めていく。また、癌間質相互作用を誘導するケモカイン, サイトカイン, 成長因子などの分子も標的として検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は、おおむね順調に経過しているものと思われ、資金を有効に使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類、抗体、培養用試薬、培養器具等
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