研究課題
ヒトiPS細胞を利用した再生医療の実現に際し、安全性担保、特に腫瘍形成回避が必要条件となる。本研究ではiPS細胞由来未分化細胞を除去することを目的とし、種々の分子標的阻害剤によるex vivo purgingを試みた。まずヒトiPS細胞を対象にEpigenetic修飾薬であるBET阻害剤(JQ1)を添加したところ、同剤が強力なNanog阻害剤として作用することを確認した。次にヒトiPS由来心筋細胞をin vitroで同Nanog阻害剤処理したところ、残存未分化細胞 (Lin28 or TRA-1-60陽性細胞)が効率的に除去されることが判明した。一方ヒトiPS由来心筋細胞はintactであり、選択的標的化が示唆された。さらに未分化細胞除去効果に関し、より深い効果を目指して分子標的阻害剤のスクリーニングを行った結果、CDK阻害剤 (CDK9 or CDK1阻害剤)がBET阻害剤 (Nanog阻害剤)と共に相乗効果を呈することを見出した。BET蛋白BRD4は転写complex (P-TEFb)を形成している。同complexはBRD4の他、CDK9やCYCLIN Tから成ることから、より深いNanog抑制効果が相乗効果を説明すると予想される。さらに近年開発されたPROTACという化合物で、プロテアソーム系で標的タンパク質を特異的に分解する低分子化合物を用いて未分化細胞除去を検証した。BETタンパク質BRD4を標的にしたBRD4 PROTACを用いた結果、BET阻害剤(JQ1)とほぼ同等の高い効果が確認された。本研究で使用された(PROTACを除く)分子標的阻害剤の多くは種々の癌でPhase II試験施行中であり、今後、“ヒトiPS細胞”を対象とした分子標的治療薬としての可能性が示唆された。
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