研究課題/領域番号 |
15K10482
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森石 武史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (20380983)
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研究分担者 |
福田 理香 活水女子大学, 健康生活学部 食生活健康学科, 教授 (30312838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アポトーシス / 骨芽細胞 / BCLXL / 過剰発現マウス / 骨形成 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
今回、我々はBCLXLを骨芽細胞に過剰発現させたトランスジェニック(tg)マウスを作出し、解析を行った。2週齢のtgマウスの骨組織でBrdU染色とTUNEL染色を行うと、骨芽細胞のBrdU取り込みの亢進と、アポトーシスの抑制が認められた。新生児頭蓋冠サンプルでp53およびそのアポトーシス関連ターゲット遺伝子の発現が低下していた。10週齢のtgマウスのマイクロCT解析で、大腿骨や腰椎海綿骨骨量の増加が認められたが、形態学的観察では骨芽細胞・骨細胞の形態や骨構造は野生型マウスと同様であった。骨組織形態計測で石灰化面や骨形成速度が上昇、血清中オステオカルシン濃度も上昇しており、活性化した骨芽細胞が増加し骨形成が亢進していた。次に、加齢による骨量変化を検討するため、μCTを用いて6週齢から12ヶ月齢までのtg雄マウスを解析したところ、トランスジーンの発現量の低下した12ヶ月齢でも海綿骨高骨量が維持されていた。高骨量の維持は、雌マウスでより顕著に認められた。また、3点曲げ試験で骨強度の増加が観察された。新生児頭蓋冠由来初代骨芽細胞で播種密度を変えて、骨芽細胞のアポトーシスと分化の検討を行った結果、tgマウス由来の骨芽細胞では、アポトーシス抑制による骨芽細胞密度増加により骨芽細胞分化が促進されており、BCLXLは骨芽細胞のアポトーシス抑制により、骨形成を促進していると考えられた。骨芽細胞特異的BCLXL過剰発現マウスでは、骨芽細胞の形態や機能に影響することなく、アポトーシス抑制により正常な骨構造の海綿骨・皮質骨が増加し、かつ生涯にわたって高骨量が維持されていた。したがって、BCLXLは骨粗鬆症治療のターゲット分子となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2.3kb Col1a1 BCLXL tgマウスの解析により、骨芽細胞のアポトーシス抑制は、骨形成を促進し、骨芽細胞の形態や機能に影響することなく正常な骨構造の海綿骨・皮質骨が増加し、かつ生涯にわたって高骨量が維持されるという新しい知見を得ることが出来た。その他のtgマウスも順調にサンプル収集が進んでおり、今後も骨芽細胞機能と増殖・アポトーシスの関与について解析を行っていける。
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今後の研究の推進方策 |
2.3kb Col1a1 BCLXL tgマウスは骨芽細胞のアポトーシス抑制により、骨形成を促進し、生涯にわたって高骨量を維持していた。今後、同tgマウスについて、オスは尾部懸垂実験、メスはOVX実験を行い、非荷重やエストロゲン欠乏によって引き起こされる骨量減少がどのような機序によるものか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、tgマウスの組織学的解析を行ったが、一般的な脱灰パラフィンブロック標本作製や、マイクロCT解析、細胞培養実験が主で、血清サンプルで解析を行う高額なELISAキット(オステオカルシン(OC)、Ⅰ型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ-5b(TRACP-5b))の購入を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、前年度と同様の組織学的解析を行い、さらにELISAキット(オステオカルシン(OC)、Ⅰ型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ-5b(TRACP-5b))を購入し、血清サンプルを用いた解析を行う。
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