研究課題/領域番号 |
15K10743
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 千里 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60581882)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 内耳 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
内耳障害発生のメカニズムにはミトコンドリアの機能障害が深く関わると考えられており、この説は、ミトコンドリア遺伝子異常に起因する疾患の多くが難聴を合併する臨床的背景や、実験動物による基礎研究などにより支持されている。一方、ミトコンドリア機能解析は、様々な研究分野において行われているが、内耳におけるミトコンドリア機能評価については、十分に確立しているとはいい難い。本研究は、内耳におけるミトコンドリア機能のリアルタイム定量評価法を確立することを目的としている。 我々は、不死化内耳培養細胞HEI-OC1、および、マウスコルチ器の器官培養に、ATP阻害剤(オリゴマイシン)、脱共役剤(FCCP, カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)、ミトコンドリア複合体III阻害剤(アンチマイシンA)、ミトコンドリア複合体I阻害剤(ロテノン)を投与し、酸素消費速度の変動を細胞外フラックスアナライザーを用いて計測する実験系を確立する研究を行っている。これまでの成果として、HEI-OC1、および、マウスコルチ器器官培養ともに、オリゴマイシン添加による酸素消費速度の低下、FCCP添加による酸素消費速度の上昇、アンチマイシンA・ロテノン添加による酸素消費速度の低下、がそれぞれ確認できた。また、HEI-OC1の系を用い、H2O2暴露による酸化ストレスモデルで呼吸代謝が落ち、薬剤性ストレスにも易障害性が増すことを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内耳におけるミトコンドリア機能のリアルタイム定量評価法として、不死化内耳培養細胞、マウスコルチ器の器官培養系において、酸素消費速度の変動を細胞外フラックスアナライザーを用いて計測することができた。また、不死化内耳培養細胞の系を用いて、H2O2暴露による内耳酸化ストレスモデルに関し、新知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
正常マウスのコルチ器の培養系において、好気呼吸のプロファイリングが可能となったが、現時点で、基礎呼吸に個体間のばらつきが見られている。細胞外フラックスアナライザーは、もとは細胞ベースの代謝研究用に設計されているものであるが、本研究ではマウスコルチ器の培養系に応用し、呼吸パラメータのプロファイリングを行っているため、均一な細胞集団での測定が行えていないという、手技的な問題が生じている可能性がある。ばらつきが少なくなるような実験手法や解析手法の検討を今後行っていく予定としている。また、本実験系を用いて、遺伝子改変マウスや内耳障害モデルマウスによるコルチ器全体のミトコンドリア機能の評価を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費への出費が、想定していた額よりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として、培養用試薬、ミトコンドリア機能解析用試薬、実験用動物・飼育費、その他の分子生物学用試薬に使用する。また旅費として、国内学会発表と国際学会発表を予定しているため、各々に対して使用する。
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