研究課題
内耳の加齢変化は不可逆性であり、有効な治療法は存在しない。その発生機序は諸説あるが、酸化ストレスとミトコンドリア機能障害が中心とされる。またミトコンドリア病の多くが難聴を呈することなどから、ミトコンドリア機能障害と難聴の密接な関係が示唆されている。本研究では、内耳におけるミトコンドリア機能の定量評価法の確立と、確立した実験系を用い、内耳の病態モデルにおけるミトコンドリア機能の評価を行うことを目的とした。まず、内耳由来細胞株House Ear Institute-Organ of Corti 1 (HEI-OC1)、および、蝸牛器官培養系有毛細胞を用いて、蛍光色素5,5',6,6'-tetrachloro-1,1',3,3'-tetraethylbenzimidazolylcarbocyanine iodide (JC-1)によるミトコンドリア膜電位の定量評価系を確立した。また、細胞外フラックスアナライザーによるミトコンドリア呼吸機能の測定系を確立した。HEI-OC1をH2O2にて短時間処理し、細胞増殖率低下と細胞生存率不変の条件から内耳細胞老化モデルを作製した。内耳細胞老化モデルでは、ミトコンドリア膜電位の低下を認めた。また、内耳細胞老化モデルでは、Carbonyl cyanide-p-trifluoromethoxyphenylhydrazone (FCCP)投与によるミトコンドリアの酸素消費速度の低下をH2O2の濃度依存性に認め、ミトコンドリアの最大呼吸能の低下が示された。
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