研究課題/領域番号 |
15K10980
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 裕子 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (80423284)
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研究分担者 |
井上 一由 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (10624413)
森松 博史 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30379797)
高橋 徹 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (40252952)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 集中治療学 / 急性腎不全 / 横紋筋融解症 / ヘムオキシゲナーゼ-1 / Bach1 / Nrf2 / オートファジー |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまで、急性臓器不全の細胞傷害には酸化ストレスが関与し、細胞保護作用をもつストレス蛋白Heme oxygenase(HO)-1が誘導され、HO-1発現を制御するBasic leucine zipper transcription factor 1(Bach1)やNuclear factor E2-related factor 2 (Nrf2)の動態について報告してきた。 急性腎不全は救急・集中治療現場で遭遇することの多い病態の一つだが、特に災害現場では、横紋筋融解症による急性腎不全は初期治療の遅れから致死的状態を招くことがある。横紋筋融解症に起因する腎傷害の増悪因子として、遊離ミオグロビンによる酸化ストレスの関与が考えられる。 H27年度は、ラット横紋筋融解症性腎傷害モデルにおけるHO-1の発現機序・発現意義について検討した。雄性Sprague-Dawleyラットを用い、24時間絶飲後50%グリセロールGly筋中による横紋筋融解症後腎傷害モデル(Glyモデル)、腎特異的HO-1誘導剤SnCl2を投与した横紋筋融解症後腎傷害モデル(SnCl2+Glyモデル)を作成した。両モデルでGly投与後1時間より血清クレアチニンキナーゼ(CK)、血清aspartate aminotransferase(AST)ともにコントロールと比較し有意な上昇がみられ、横紋筋融解症が惹起されていることを確認。血清BUN, クリアチニンはGly投与後24時間でコントロール群より有意に上昇したが、SnCl2+Glyモデルでは上昇が見られず、SnCl2投与は腎保護的に働いていることが示唆された。Gly投与により腎におけるHO-1の強発現、ヘム合成系律促酵素ALAS1 の抑制、Bach1蛋白の核から細胞質への移行がみられ、ミオグロビンによる酸化ストレスが腎障害の一因となっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は、50%グリセロール筋中によるラット横紋筋融解症による腎傷害モデルにおける腎のHO-1の誘動を検討したが、HO-1ならびにALAS1, Bach1の遺伝子レベル、蛋白レベルの実験はほぼ終了した。。本モデルにHO-1誘導剤である塩化スズ投与し腎機能を改善も確認し、現在SnCl2自体のHO-1発現機序の検討を行なっている。 また、HO-1阻害剤投与により、当モデルの腎機能が悪化するかどうかの検討は現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、H27年度に引続きHO-1阻害剤投与により、Glyモデルの腎機能の詳細な検討を行なう。 一般的にHO-1の発現は転写調節因子であるNrf2-keap1系(Nrf2は正常状態では細胞質にKeap1と結合して存在しているが、ヘムの増加や酸化ストレスにより活性化され、核内に移行してHO-1の発現を活性化する)により制御されている。またNrf2はp62タンパクを介してオートファジーにも連動していることが分かってきました。ラット横紋筋融解症モデルにおいて近位尿細管でオートファジーが活性化されることは既に報告されているが、その活性化の詳細な意義については明らかではない。横紋筋融解症後腎傷害モデルにおけるNrf2、Keapの遺伝子発現や細胞内の局在を経時的に検討し、HO-1との関係を詳細に調べ、当モデルにおけるオートファジーの役割を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度中に終了予定であったHO-1 活性阻害剤を投与したときの、ラット横紋筋融解症性腎傷害の腎機能の評価を、H28年度に継続して行なっているため、使用予定の試薬代がH28年度に持ち越された。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は、H27年度に引続きHO-1阻害剤投与により、Glyモデルの腎機能の詳細な検討を行なう。 さらに、ラット横紋筋融解症モデルにおける腎機能傷害とオートファジーの関係を明らかにするために、当モデルにおけるNrf2、Keap1の遺伝子発現や細胞内の局在を経時的に調べ、HO-1との関係を詳細に検討する。また、オートファジー阻害実験も計画しており、モデル作成のためのラット、投与薬剤の購入が必要となる。H28年度は、それぞれのラットモデルに対して、腎機能評価のための生化学的検査、組織学的検討、遺伝子的解析(Northern blot法)、タンパク質解析(Western blot法)を行なっていく予定である。
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