研究課題/領域番号 |
15K10991
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
上田 健太郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20438279)
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研究分担者 |
木田 真紀 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (00326381)
米満 尚史 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80382331)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | AKI / アポトーシス / オートファジー / Bcl-2遺伝子 / HGF遺伝子 / HVJ Envelope vector |
研究実績の概要 |
重症外傷術後などに発症する急性腎障害(AKI)は尿細管細胞死が主な病態であるが、アポトーシス以外の機序ははっきりしていないため、一度発症すると非常に高い治療抵抗性を示す。そのため、AKI発症・進行の機序解明と新規AKI治療の開発が必要である。本研究では、虚血再潅流モデルを用いてAKI重症度・AKI発症からの時期に応じてどのようなタイプの細胞死(アポトーシス、オートファジー、あるいはネクローシス)が関連しているのかを明確にする。次にすべてのタイプの細胞死を制御するBcl-2遺伝子治療の効果を検討し、さらに腎細胞を増殖・再生するHGF遺伝子併用投与の相乗効果を検討する。また、今回の遺伝子治療中にオートファジー阻害剤を投与することで、オートファジーのAKIに対する機序は病態改善か悪化かを鮮明にする。 MD Anderson Cancer Centerから寄与されたBcl-2 cDNA plasmidと、HVJ Envelope vector KITを用いて(一部方法を改良して)Bcl-2 expression HVJ Envelope vectorを作製した。同様に過去に当大学で作製したHGF cDNA plasmidを用いてHGF expression HVJ Envelope vectorを作製した。それぞれのvectorを腎皮質集合管細胞由来のM1細胞にtransfectionし、Western blot法で確認した。in vivo実験で治療効果が期待できると予測されるBcl-2あるいはHGFの発現増強効果を認めた。 腎虚血再潅流モデルはWistarラットで両側腎門部の腎動静脈を露出し、動脈クリップを用いてクランプすることで作製した。当初は30分クランプを軽症モデル、60分クランプを中等症モデルと90分クランプを重症モデルとする予定であったが、安定したAKIモデルが作製できなかった。現時点では中等症モデルは作製せず、50分クランプを軽症モデル、100分クランプを重症モデルとして研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
治療効果が期待できるAKI治療用Vector(Bcl-2 expression HVJ Envelope vectorとHGF expression HVJ Envelope vector)の完成に約2年間かかってしまった。 また、今回我々として初めてであった腎虚血再潅流モデル作製もやっと現時点でプレリミナリーな実験ができるレベルであることが遅れている大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の腎虚血再潅流モデルを用いたin vivo実験を行う予定である。 1. 重症度別腎虚血再潅流モデルにおけるAKI、オートファジー、アポトーシスの評価をモデル作製の12時間後、24時間後、3日後、10日後に行う。 2. Bcl-2遺伝子治療効果の検討と、オートファジー阻害剤併用によるAKIにおけるオートファジーの役割の精査をモデル作製の24時間後、3日後、10日後に行う。 3. AKIに対する尿細管細胞死抑制を目的としたBcl-2遺伝子治療に、腎再生を促進するHGF遺伝子治療の併用効果の検討をモデル作製3日後、10日後に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は既存の試薬やラットが多く有り、ほとんど直接経費を必要としなかった。そのため平成28年度にも次年度への繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は本格的にin vivo実験を行う予定であるため、直接経費の残りを研究の進行に合わせて緻密に使用していく。
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