研究課題/領域番号 |
15K11331
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
神谷 真子 朝日大学, 経営学部, 准教授 (80181907)
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研究分担者 |
近藤 信夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40202072)
智原 栄一 朝日大学, 歯学部, 教授 (80244581)
山崎 裕 北海道大学, 歯学研究科, 教授 (90250464)
村松 泰徳 朝日大学, 歯学部, 教授 (30247556)
高山 英次 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70533446)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70513670)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 麻酔薬 / 癌組織内微小環境 / 免疫応答 |
研究実績の概要 |
我々は,マウス口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞と同系統マウスの胎仔線維芽細胞(10T1/2)を単独あるいは組合せて刺激脾細胞と共培養することで,間質細胞を含む腫瘍組織内微小環境モデルの構築を試み,平成27年度までに試験管内共培養系をほぼ確立している。 そこで今年度は,平成27年度に引き続き,本試験管内共培養系(癌微小環境モデル)をもちいて,局所麻酔薬・静脈麻酔薬等に対するOSCC, 10T1/2および刺激脾細胞の感受性を検討し,麻酔薬投与による免疫病態改変の解析を行った。その結果,用いた全ての麻酔薬に対して,脾細胞が最も感受性が高く,逆に転移巣由来L系OSCCが最も強い抵抗性を示す事が明らかとなった。加えて,これら麻酔薬は刺激脾細胞のインターフェロンγ産生能をさらに低濃度で阻害し,なかでもロピバカインとプロポフォールのIC50が最も低い値を示した。以上の結果から,脾細胞は10T1/2やOSCC細胞株に比較して麻酔薬に対する感受性が高く,免疫応答能は細胞毒性を示さないより低濃度でも有意に抑制されることが示された。 一方,本年度は担癌マウスの全身免疫系の変動について,脾細胞のサイトカイン産生能に加えMDSCの存在比率を指標にした解析も行った。その結果,転移巣由来のOSCCを移植したマウスは強い免疫抑制環境下にあることが明らかとなった。さらに,麻酔薬処置による影響の観察も開始しており,プロポフォール連続処置群において,担癌マウスの生存日数がコントロール(未処置群)およびミタゾラム処置群に比較して短くなる傾向を認めている。現在その原因を追及中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試験管内共培養系に関してはほぼ順調で,27年度に引き続き細胞株,麻酔薬の種類を増やして麻酔薬感受性に関する研究を遂行し,麻酔薬感受性を考慮した共培養系の至適条件の決定を済ませている。 一方,着手が遅れていた担癌マウスを用いた動物実験について,従来行ってきた①末梢血サイトカイン濃度, ②脾リンパ球のサイトカイン産生能および、③脾細胞リンパ球亜集団の存在比率などを指標とした免役応答解析に加え,④MDSCの存在比率を指標とした解析を試みた。このためMDSC解析の条件設定に時間を費やし,計画がさらに遅れ気味となってしまったが,現在までに解析条件の設定も終了した。 これらの結果の一部は,平成28年歯科基礎医学会学術大会で発表したほか,2017年中に学術雑誌に論文掲載予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までに,試験管内共培養系(癌微小環境モデル)の条件設定は終了したので,今後は,各細胞のviability には影響を与えない低濃度領域において, 麻酔薬がOSCC-MSC-免疫担当細胞の相互作用に与える影響を観察することで,麻酔薬投与による癌組織内での免疫病態改変の解析を行う。 さらに,これと平行してOSCC担癌モデルマウスにおいて,麻酔薬の投与に伴う宿主免疫動態の変化を, 血清サイトカイン濃度測定,刺激脾細胞のサイトカイン産生量測定,脾リンパ球亜集団解析, 脾臓中の MDSC解析を基に明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に以下にあげる2つの理由である。このほかにも日頃から綿密な実験計画を立て,無駄のない消耗品の使用を心がけたことにある ①試験管培養系を24wellプレートから96wellプレートを用いた系に縮小できたため, 使用する抗体や試薬などが大幅に節約できた。 ②年度の初めに計画していた癌学会(横浜)での成果発表を, 業務などの都合で日程調整ができず取りやめた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究計画である宿主免疫系の解析では細胞培養,FACS,ELISAなどの実験手法を用いる。これらに使用する抗体・血清・成長因子などは高額であるため,平成29年度への繰り越し金分も含めた資金をこれらに充て,実験系の充実を図ることにする。また,本研究の最終年度であるので,学会発表や学術論文を通して研究成果の公表にもより一層力を入れる。そのための経費としても使用予定である。
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