研究課題
平成28年度までに、マウス口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞と同系統マウスの胎仔線維芽細胞(10T1/2)を単独あるいは組合せて刺激脾細胞と共培養することで、間質細胞を含む腫瘍組織内微小環境モデルを再構築し、本実験系を用いてOSCC、10T1/2および刺激脾細胞に対する局所麻酔薬(ロピバカイン、メピバカイン、リドカイン)の細胞毒性や、免疫応答に対する効果を評価してきた。その結果、脾細胞は10T1/2やOSCC細胞株に比較して局所麻酔薬に対する感受性が高く、免疫応答能はより低濃度でも有意に抑制されることを明らかにしている。平成29年度はさらに静脈麻酔薬であるプロポフォールとミダゾラムの効果についても同様の解析を進め以下の結果を得た。①プロポフォールのOSCC、10T1/2、刺激脾細胞に対する50%細胞毒性(CC50)はそれぞれ、0.27、0.46、0.14mg/ml、であり、オーダー的にも、脾細胞が最も感受性が高い点でも局所麻酔薬と類似していた。②ミダゾラムのOSCC、10T1/2、刺激脾細胞に対するCC50は、0.014、0.058、0.039 mg/mlであり、他麻酔薬に比較して10倍以上も細胞毒性が強く、OSCCも本薬剤に対して強い感受性を示す点が特異であった。③静脈麻酔薬は、細胞毒性を示さない程度の低濃度領域でも有意に刺激脾細胞のサイトカイン産生能を阻害した。特にミダゾラムの阻害効果は強力で、インターフェロン-γとインターロイキン-10産生に対する50%阻害濃度(IC50)は脾細胞に対するCC50の4~40倍以上低値を示した。以上の結果から、静脈麻酔薬は局所麻酔薬に比べて脾細胞の免疫応答を抑制する作用が強く、特にミダゾラムでは臨床的に使用する際の血中濃度に近い濃度でも免疫応答に影響を与える危険性が示唆された。
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