本研究は、HTLV-1関連脊髄症(以下、HAMと略す)患者の体験世界である病いの構造を明らかにし、そこに内包される意味から、HAM患者のQOLの維持・向上に寄与する看護実践方法論を構築するという全体構想を持つ。その全体構想における本研究の具体的な目的は、HAM患者のセルフマネジメントを査定するツール(以下、セルフマネジメントスケールとする)を開発することである。 2019年度は、本助成事業の最終年度に当たり、セルフマネジメントスケールの原案を作成するために、スケール開発の基盤となる、HAM患者のセルフマネジメントプロセスに関するデータ分析を継続して実施した。データ分析は、グラウンデッドセオリーアプローチを研究手法としているが、7名の研究参加者個別のデータを統合して、HAM患者のセルフマネジメントの構造を明らかにし、セルフマネジメントスケールの原案を作成するまでに至ることができなかった。しかし、現段階で、HAMという認知度の低い疾患故に生じるであろうHAMを理解するというプロセスや他者に疾患を理解してもらうというプロセス、また、治療法が確立していないことから、医療の確保や治療薬の開発に向けて医師の活動を後押しするというプロセスなど、他の神経難病患者のセルフマネジメントプロセスにはない、特徴が明らかになってきていることから、今後も継続して本研究に取り組み、早急にHAM患者のセルフマネジメントを査定するツールを開発し、成果を公表できるよう努めたい。
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