研究課題/領域番号 |
15K11894
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
石井 敦子 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 講師 (30405427)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘルスプロモーション / 健康支援 / 市場 / 社会環境整備 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、個人の健康づくりを支援する社会整備のなかでも、日常生活に最も身近であるにもかかわらず、取組が立ち後れている市場環境整備について、その現状を把握し、課題を明らかにすることに加え、米国のヘルスプロモーションによる市場環境整備の事例を比較検証し、日本の市場整備の課題と方向性を明らかにすることである。 今年度は、昨年度に引き続き平成25年度からの10年間計画である健康日本21(第2次)を受けて、各自治体の健康政策の基盤となる健康増進計画において、社会環境整備としての健康増進施策がいかに進められているかについて実施状況調査を行った。その調査結果から次の2点についてさらに研究を進めた。 一つは、先駆的事例のヒアリング調査である。健康格差の解消や新たな健康文化の構築を目指して、市場を巻き込んだ社会環境整備をしている東京都足立区の事例調査を行った。その取組のプロセスや、市場を巻き込む上での困難やそれをいかに克服したかといった経緯について具体的に把握することで、健康増進施策として行政主導で市場の環境整備を進めていく上での課題を明らかにすることができた。 もう一つは、人々を取り巻く社会環境としての市場とその地域住民の健康行動との関連について検討することで、地域の健康増進において市場が担う役割を明らかにすることである。昨年度から継続して調査してきた各自治体の健康増進計画の進捗状況から、運動習慣に着目し、各自治体の運動習慣者割合とその自治体にある運動系商業施設のフィットネスクラブの店舗割合との関連について分析した結果、やや高い正の相関がみられたことから、市場が地域の健康行動に及ぼす影響は少なからずあり、健康づくりの支援環境としての市場の役割について知見を深めることができた。この研究成果については、第18回日本健康支援学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、国内の各自治体による社会環境整備の実態把握として、健康増進計画における健康増進施策の実施状況調査を行った。その調査結果から得られた先駆的な事例として東京都足立区の取組についてヒアリング調査を実施し、市場を巻き込んだ社会環境整備の経緯や成果、今後の課題等について把握することができた。健康支援の商業施設であるフィットネスクラブでの健康支援状況の調査を実施することができ、その市場規模と地域住民の健康行動の相関分析から、市場のもつ健康支援の役割について検討することができた。また、米国のヘルスプロモーションに関する基礎資料を得ることができ、来年度の実地調査に向けた準備が整ってきている。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の研究成果を踏まえ、平成29年度は米国の実地調査を実施する。企業主導による市場環境整備についての事例調査に加え、これまでの研究のなかで明らかになってきた米国サンフランシスコにおける市民の健康行動及び健康意識が歴史的に根付いてきた現象についてさらに詳しく調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度である昨年度の研究遂行において、既存資料を中心に進めたため、直接経費が繰り越していることと、今年度に予定してた米国調査が次年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
米国現地調査の実施に経費の支出を予定している。
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