東日本大震災では非営利組織が支援や復興を担う重要な主体として浮上したが、研究代表者が実施した大規模調査によると被災地域の地元の非営利組織の影響力は資金からみると限定的であった。しかし、その中でも比較的影響力の大きい地元の非営利組織には被災地外出身のリーダーが参画していることが多く、また、被災地における唯一の大都市の仙台では地元非営利組織の影響力が強い。ここから都市を中心に蓄積された人的資本・社会関係資本をどの程度活用できるかがソフト面の災害対応の成否を規定する重要な要因だとの仮説が導かれる。本研究では復興支援における非営利セクターの人的資本と社会関係資本の蓄積・活用状況の震災前後の変化、この変化が引き起こす非営利組織の創出・変化や地域構造の変化を把握することで上記仮説を検証することが本研究の目的である。統計的アプローチの研究に関しては、前年度から継続していたの非営利組織のリーダーへのヒアリング(80名)を終了し、パーソナリティや組織の実情に加え、具体的な人的ネットワークを把握し、社会的ネットワークの計量分析を実施した。結果、非営利セクターの社会ネットワークはインターネットとよく似た、スケールフリー・ネットワークであることがわかった。スケールフリー・ネットワークは構造上、情報の伝播性が高く、ランダムな攻撃にたいして頑強である。この構造は被災前から調査時点まで変化しておらず、全国的なものであることが示唆された。また、社会ネットワークのハブの性質やその構造上の位置と非営利セクターの活動実態の関係性も把握できた。事例研究は、昨年度から引き続き、東日本大震災においえて非営利セクターの活動が特殊に活発であった仙台市における、非営利セクターや市民協働にかかわる公文書をはじめとした各種資料や、キーパーソンへのインタビューを実施し、協働を育む慣習や環境を培ってきた歴史的経緯を把握した。
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