研究課題
本研究は、超高齢多死社会のなかで全国に広がりつつあるNPO”ホームホスピス”が持続可能なケア・システムとなりうるのかを検証することである。これまで筆者らは、病いや障害に対する人びとの価値観がそこに生活する人びとにどのような影響を与えているかを、九州、特に熊本県内の多くの地域で使用される「のさり」という方言に着目し調査を重ねてきた。この言葉は、老い、病いや障害だけでなく、その先にある「看取り」や「死」についても同様に受け止められていた。しかしながら、介護保険の制度ができ療養の場が在宅へと移行しやすくなったとはいえ、近年の家族構成の変化や生活様式の多様化において長期で重度の介護と看取りは困難な場が少なくない状況が生まれていた。ホームホスピスは「宮崎をホスピスに」という市民活動を行っていたNPO団体ホームホスピス宮崎が、2004年に市内の空き家を借りどんな疾患でも最期まで暮らすことのできる家として活動することから始まった。2020年3月現在、全国で33団体のホームホスピスが開設されている(全国ホームホスピス協会)。2010年に筆者らが開設したNPOホスピスもそのひとつである。最終年度では、筆者らが開設したホームホスピスを中心に、開設から5年以上が経過した全国のホームホスピスの実態を調査、さらに山口らの先行研究のデータを熟考し考察を行なった。その結果、ホームホスピスは地域にある家という環境の影響は大きく、「利用者・職員・家族が水平関係にあること」「地域資源の活用・開かれた住まい」などから「地域に開く」「看取りを文化としてとらえる」という共通点が浮かび上がり、地方都市のなかで持続可能なケアシステムの可能性が示唆された。しかしながら、その継続性には介護職員の確保、外部資金の調達状況、リーダーの資質なども大きく影響を与えていることが明らかになった。
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地域ケアリング
巻: Vol.20, No.12 ページ: 73-78
エンドオブライフケア
巻: Vol.2,No.2 ページ: 77-81