ヒトの「自由」につながる能力の萌芽を明らかにするため、チンパンジーを対象に自由を実現する行動を検討した。室内実験では、チンパンジーが自由に扉を開けて、隣接する運動場を出入りできる文脈で、自己の認識や他者の認識について調べた。チンパンジーが操作する扉にチンパンジーの自身の姿を写す鏡(自己鏡映像)やモニタ(自己ライブ映像)、あるいは反対側の様子(他者ライブ映像)を提示した。また、野生チンパンジーを対象に、森にカメラトラップを設置して、道具使用行動や、“板根叩き”と呼ばれるコミュニケーションを調べた。一連の研究から、行動の柔軟性には物事の理解の深さ、複雑さが関係していることが示唆された。
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