カチオン性高分子凝集剤によるコロイド粒子の凝集過程におよぼす腐植物質の影響を明らかにするために,モデル腐植物質としてのアニオン性高分子の有無による高分子吸着層厚さ,表面荷電特性,最適凝集条件下における凝集速度の変化を調べた。その結果,粒子表面に形成された高分子凝集剤の吸着層はアニオン性高分子の添加で著しく収縮すること,最適凝集条件下ではほぼゼロであった電気泳動移動度がアニオン性高分子の添加量増加に伴って増大し,それに合わせて凝集速度が低下することが示された。以上のことから,高分子吸着層の収縮および表面荷電特性の変化がアニオン性高分子による凝集阻害メカニズムの要因であると推察された。
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