地方分権推進を主な背景に、道州制導入に関する議論が高まりを見せているが、関連する研究は制度論や経済的側面がほとんどである。道州制の効果に関する報告書もいくつか存在するが、特に環境管理の観点から定量的な分析を行っている研究はほとんど見られない。本研究では、我が国における道州制の導入を見越し、一つの州における広範囲に渡る複数流域の管理の最適な方法とその効果を、一つの流域が複数の州に跨がる場合の具体的例も取り上げつつ、具体的数値を持って明らかにする。本年度は、本研究の目的である、道州制導入後の関東圏の流域管理政策を一体的に分析するため、分析対象を当初の対象である東京湾、利根川、霞ヶ浦と昨年度までにモデルの構築を終えた鬼怒川、小貝川に加え、渡良瀬川、巴波川、思川まで拡張し、より現実に適用可能な解を得るべく、モデルを構築、改良し、シミュレーション分析を行った。モデルでは道州制が実施された関東圏内に北関東州及び南関東州が存在するものとし、両政府が下水道等の既存技術やバイオマス発電や太陽光発電等の再生可能エネルギー技術の導入政策を含む各種政策を実施して環境負荷を削減するものとして、構築した各流域の社会経済モデル、環境負荷物質動態モデル、エネルギー収支モデルを一括リンクし、プログラミング及びシミュレーション分析を行った。シミュレーションは、両州内の産業部門と家計から排出される温室効果ガス・大気汚染物質(CO2、CH4、N2O、NOx、SOx) 、水質汚濁物質(T-N、T-P、COD)に対し、温室効果ガス・大気汚染物質に関してはその排出総量に、水質汚濁物質に関しては、各公共用水域への流入総量に制約を課し、実施した。これによって、各州内における各環境修復技術の導入を含む、環境負荷削減政策の最適組み合わせ、配置、順序そして環境負荷物質の最適削減経路等を明らかにした。
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