研究課題/領域番号 |
15K12717
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
保田 真理 東北大学, 災害科学国際研究所, 助手 (00748238)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 減災意識醸成 / 情報と認知 / 認知と行動 |
研究実績の概要 |
2016年4月には熊本地震が発生し、直下型地震による新たな被害が発生した。東日本大震災以降、巨大災害への備えは、国を挙げて取り組んできたが、災害の形が変われば、また大きな被害を出す結果となり、個人の災害リスクへの認知とそれに対して備え行動しようとする「減災意識」の啓発醸成が重要な災害対策になることが新めて示された事案であった。 今年度は引き続き、小学校へのサイエンスデリバリー授業を実施した。対象は宮城県、福島県に加え、岩手県、和歌山県、兵庫県の沿岸部、内陸部を問わず、様々な地理的災害リスクの可能性を含む地域に出向き行った。 特に2年目となる今年度は、前年度のアンケート結果を踏まえ、デリバリーサイエンス授業のコンテンツに認知心理学の要素を取り入れ、学習から災害をイメージさせるグループワークを充実させ、90分間に災害を疑似体験できるそうなプログラムとした。対象とした児童は2,800名を上回り、学校からの要請により、複数回訪問する事例も出てきた。 東日本大震災から5年以上の年月が過ぎ、震災の記憶を持たない児童も増えてきたため、より科学として自然災害をとらえさせる必要性は高まってきている。 これまでのまとめとして、訪問してきた小学校から3校がデリバリーサイエンス授業から学び取ったことと、児童が授業後に取り組んが防災・減災学習の発表を行った。この活動は国連防災世界会議を引き継ぐ仙台防災未来フォーラムでも発表され、高い評価を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デリバリーサイエンスのプログラム構成が学校現場で認知され、教員との連携関係が円滑に進み、通常授業に関してもアドバイスが可能となったことは、児童から教員への意識拡散効果が見られる。対象とした児童数も5,000名を超え、質問紙によるアンケート調査の結果からも、児童の減災意識は大きく向上していることが証明された。新しく取り入れた 同じ群を対象とした3回目のアンケートでも、家族間での情報共有や、減災対策のために家族で何らかの行動をした児童が65%以上に上ることがわかった。 この傾向は海外の児童に対して行ったデリバリーサイエンス授業でも見られ、2016年11月にインドネシア アチェ州でのアンケート結果も同じ傾向を示している。 デリバリーサイエンス授業で回った小学校では、児童が家族や地域住民に対して、居住地域の特性を学習し、独自の減災手法を開設したパンフレットや町歩きマップを作成した事例が報告されている。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災から6年経ち、熊本地震から1年が経過したが、自然災害に対する減災意識は決して高まっているとは言えない現状である。ある程度の被害を経験した人々は、次の災害に備えようとするが、全く被害を経験していない地域の人々は、やはり被災を自分ごととして捉えることは困難である。しかし、比較的若年層はレクチャーやグループワーク、ゲームなどを通じて、災害をイメージすることができる。今年度は2年間の成果となるアンケートの解析を続けながら、デリバリーサイエンス授業を小学校の教師が実施できるように、コンテンツの整理と精度を向上させることと、プログラム構成を意見交換しながら進めたい。サイエンスの面の高度化のために地理的リスクハザード面の解説を加えるために、理学分野の研究者らと協働して効果的な手法を取り入れていきたい。認知を深めるために、認知心理学分野との連携を深め、プログラムの理解度を高めていきたい。
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