研究課題/領域番号 |
15K12930
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
熊倉 和歌子 東京大学, 附属図書館, 研究員 (80613570)
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研究分担者 |
亀谷 学 北海道大学, 文学研究科, その他 (00586159)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境史 / エジプト / ファイユーム / 農業 / 灌漑 / 記録管理 / ナイル / 文書 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、近年、学際的分野として注目されている環境史のディシプリンの確立と、その可能性の提示を目標として、立ち上げられた。そのためのケース・スタディとして、エジプトを対象に前4世紀に始まるギリシア・ローマ期から近代に至るまでの環境変動と農業生産の相互作用を探り、そこに現れる変化が支配や国家による記録管理のあり方(国家が何を、どこまで把握したか)にどのような影響を与えたかについて検証する。 本研究プロジェクトは二段階にわけて進めていく。それは、第一に、上掲の課題を解決するための方法論の確立、第二に、それに基づく通時的データベースの構築と公開である。初年度は、第一段階の方法論の検討を進めた。具体的には、四度の研究会を開催し、そこで各時代から得られる歴史的データの共有とそれに基づく方法論の検討を重ねた。研究内容は、歴史的検討とIT技術的検討を両輪とし、前者については、歴史学の専門家が担い、後者については情報学の専門家が担った(連携研究者の高橋はローマ期からイスラーム以前まで、研究分担者の亀谷はイスラーム期から12世紀まで、熊倉はそれ以降の時代を担当。研究協力者の小澤はそれらのデータを元にしてどのようなデータベースが構築可能か検討した)。 研究会での情報共有とそれに基づく議論の結果、本プロジェクトの第二段階では、エジプトのなかでも比較的文書が多く残っているファイユーム地方にしぼり、農業生産量と栽培品目のデータ、およびナイルの水位変動の通時データを収集することで意味あるデータセットを作ることができる見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請の段階で、初年度は、収集するデータを選定し、それを落とし込むデータベースの設計とデータベースへのデータの入力開始までを目標に見据えていたが、現時点ではデータベースの具体的な設計や入力作業については未着手の状態である。 この要因ついては、まず、予想していた以上に、様々な種類のデータが持ち寄られ、それらを通時的に収集できるかなどの記録の伝世状況や地域的な分布状況を調査するのに時間がかかったことがあげられる。しかし、それは申請当初には予期していなかった収穫であり、多少の遅延は決してマイナス要因によるものではない。 他方、入力作業については今後も想定していたよりも時間がかかることが見込まれる。その理由は、なによりも助成額の大幅な減額による。計画では、データ入力については謝金を支払い、院生等に依頼する予定であったが、減額によりそれが不可能となった。そのため、本研究プロジェクトのメンバーがデータ収集とデータベースの整備と並行しながらデータ入力をする必要が生じた。このことはデータベースの構築を重点的に進める次年度に相当の影響を与える可能性があることを留意しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」の欄で述べた通り、助成額の大幅な減額は次年度の本研究プロジェクトの推進に大きな影響を与えることが予想される。そのため、当初の予定通りに、データ入力を謝金で行うことができるよう、新たな研究資金の調達を模索しながら進めていきたい。 それと同時に、国内外の関連する分野の研究者とも連携しながら、より効率的な推進方法をも模索していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況が計画よりも少し遅れたため、データベースに関わる作業は来年度以降に持ち越しとなった。それにより、当初計上していた、ソフトウェア代やパソコン周辺機器等の消耗品の購入も来年度以降に持ち越しとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
必要に応じて、当初の予定通りにソフトウェア代やパソコン周辺機器など、データベースに必要な消耗品を購入する費用に充てる。余剰が出た場合は、旅費等、必要経費に振り分ける。
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