中東・北アフリカ地域を対象とした環境史の研究は、近年、欧米の学界において注目を集め、研究書や論集が年々と発行されている。しかし、それらは個人研究の成果であり、それゆえに、扱われる時代は中世、近代などの時代区分に限定され、長期変動を扱う本格的な研究には至っていない。本研究は、エジプトを対象にして、ギリシア・ローマ時代からオスマン朝期までの環境史に関わる研究状況と史料状況、研究の手法について調査し、通時的な環境史研究の可能性について検討した。その結果、エジプト中南部のファイユーム地方については断続的に文書史料が得られ、通時的な環境史を展開していくことが可能であることが明らかとなった。
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