近代ピアノの成立は通常、鉄フレームの導入によって特徴づけられるが、単純に産業革命の単純な産物ではなかった。象牙加工の機械化に伴い鍵盤製造業が成立し、それがピアノアクション製造業を成立させたこと、そしてその他の部品生産業と多数の中小の手工業的ピアノ製造業が並立する状況が続いたのち、ごく少数の大生産者が出現する20世紀の体制に移行した。その過程は、アフリカとの直接的な結びつきによる象牙供給を梃子にして展開した。 一方、最終製造物としての近代ピアノのアフリカにおける普及や利用の状況は、南アフリカの例が示すように、植民地状況や人種関係を反映しつつも、単なる植民者の文化の輸入にはとどまらなかった。
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