研究課題/領域番号 |
15K12938
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小島 浩之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (70334224)
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研究分担者 |
徳永 洋介 富山大学, 人文学部, 教授 (10293276)
中村 正人 金沢大学, 法学系, 教授 (60237427)
丸橋 充拓 島根大学, 法文学部, 教授 (10325029)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文献学 / 電子資料 / 律令制 / 天聖令 / 史料批判 / 正統論 / 官僚制 / 唐六典 |
研究実績の概要 |
2018年度は研究代表者の本務校において5回の研究集会を開催して、以下のような共同研究を実施した。 ①『唐六典』巻一「三師三公・尚書都省」の解読成果に基づいて、研究メンバーで分担して訳注原稿(初稿)を作成し、全体で摺り合わせを行った。 ②『唐六典』巻二「尚書吏部」について担当を決めて精読を行い、全体で討論した。 ③研究メンバーの希望に応じて研究発表を行った。 なお、上記①②の成果の一部として『東アジア古文書学の構築 : 現状と課題』(東京大学経済学部資料室, 2018.3)を刊行した。研究代表者の小島「中国における記録媒体の変遷再考 : 文書料紙を中心として」および「唐代公文書体系試論 : 中国古文書学に関する覚書(下)」や、連携研究者の矢野「ベトナムの誥勅と神勅 : 古文書学的視点から」はいずれも、尚書都省の文書行政に関わる記述や、尚書吏部の官僚制度なかでも官吏の任用と辞令書に関わる記述を精読し得た知見を十二分に生かした研究成果である。これらの成果により、特に『唐六典』巻一「三師三公・尚書都省」の中で不明瞭であった文書の種類、文書行政の概要、公文書と官文書などの諸点においていくつかの点を明確にすることができた。また、研究メンバーが個々に官僚制・文書行政・礼制・政治体制など、制度史の基本文献である『唐六典』精読の成果を十二分に生かした研究発表や著書・論文の執筆を行った。なおデジタルテキストについては、小島が「デジタル時代の中国学リファレンス」『漢字文献情報処理研究』17(好文出版, 2018)のなかで、これまでの当該研究におけるテキスト研究の成果も踏まえつつ、一般・初学者向けの概説項目を多く執筆し、情報化時代の新史料学についてわかりやすく説明を加えた。 上述の研究成果は今後刊行予定の『唐六典』巻一の訳注稿や、校訂テキストに反映される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究のテキスト分析では、膨大な傍証資料(写本・刊本・出土資料)との突き合わせ作業が必要となり、テキストの校訂と内容把握に予想以上の時間を費やしたため。また、『唐六典』はこれまで制度史の基本文献として使用されてきたため、過去の研究成果についても徹底した吟味が必要であり、これらの分析にもかなりの時間を費やすこととなった。さらに、当初、今年度は『唐六典』巻一「三師三公・尚書都省」の訳注刊行と吏部の読了、校訂テキストの作成を目標としていたが、文書行政や官僚人事に関わる部分は難解な記述が多く、これらを理解するためにはひとまず内容研究を先行しなければ訳注や校訂じたいの精度が落ちると判断し、共同によるテキスト読解の速度を少し緩めて、研究集会での研究発表の場を設けたり、学会発表や研究論文の執筆を優先させることとしたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究の遅れを取り戻すため、1年間の補助事業期間延長承認申請をして先頃認められたため、この期間を有効に利用して共同研究を継続し、『唐六典』巻一訳注稿の速やかな刊行と巻二の読了をめざす。 テキストの校訂と内容把握に当初の想定以上の時間を費やしているが、いたずらに読解を急いで文字面だけを追っただけで研究が終了してしまっては学術的に意味がなくなってしまう。このため、当初想定していた『六典』六部の精読は計画を変更して、唐代行政の要である尚書都省部分が含まれる巻一の訳注稿刊行と、官僚制において最も重要な事項である人事を取り扱う吏部の精読、さらにそれらに基づいた研究成果の発表、また校訂テキストの基盤となる『六典』のテキスト研究の成果の発表に精力を傾けることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 今年度に刊行を予定していた『「唐六典」巻一 三師三公・尚書都省訳注稿』については、特に記述が難解である文書行政に関わる部分について、内容研究を先行させる必要から計画を変更して、訳注稿刊行を再延期したため。かつ、平成30年度に当該研究に深く関わる口頭発表を行うことが予定されており、研究期間を1年延長したことで、本研究の成果をより精緻なものとすることが確実に見込まれるため。 (使用計画) 主として訳注稿の刊行のための印刷・製本費、訳注作成や研究発表のために必要な資料購入費、旅費等に使用する。
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備考 |
その他の関連業績:小島浩之ほか「デジタル時代の中国学リファレンス①」『漢字文献情報処理研究』17(好文出版, 2018), 小林晃「新刊紹介 『宋代史から考える』編集委員会編『宋代史から考える』」『史滴』39, 2017
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