本研究の目的は、大学に属する研究者個人レベルにおける研究生産性の決定要因に関して、研究者の所属する研究機関における資源、その研究者が持つ研究ネットワークの観点から分析が可能となるようなデータベースを構築することである。このデータベースを使用することによって、研究者の論文生産性の決定要因について、研究機関における資源配分、研究者同士による国内外のネットワークの構築といったもつ無形資産の与える影響について包括的に分析することが可能となる。 データベースの構築方法は、個人別研究成果、論文情報、研究者の持つ研究資源、大学等研究機関が持つ資源を定量的に整理し、各データを横断的に接合するというものである。昨年度までは、論文データベースの書誌情報や引用情報を著者別、著者の所属先別に整理した。また、研究者が持つ研究資源や、研究機関が持つ研究資源を定量的に把握するため、科学研究費助成事業データベースや大学等における産学連携等実施状況調査の結果を参照し、必要な情報を整理した論文データベースに接合した。 2018年度は、昨年度までに作成したデータベースを用いて、研究分野別に研究者レベルのネットワーク分析を行った。具体的には、医薬品分野、環境工学、公害の研究分野について、日本人研究者が執筆者に名を連ねている論文を抽出し、共著者とのネットワーク分析を1996年、2000年、2005年、2010年~2013年の各年について行った。その結果、全体的に、2000年または2005年までは日本人研究者同士がネットワークを形成する場合が多かったが、2010年以降は日本人研究者と外国人研究者がネットワークを形成する場合が増加傾向にあることが示唆された。また、日本人研究者とネットワークを構築する外国人研究者の国籍は、OECD加盟国等の先進国に限らず、その他の国も多いことがわかった。
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