同研究の最終年度には、オランダ(アムステルダム、近郊)で、ワーキング・マザー13名を対象に、個別面接による質的調査とアンケート調査を実施し、就労・家事・育児の状況、ワーク・ライフ・バランス、ウェルビーイングについて調査した。オランダでは1982年よりワークシェアリングが推進され、通常の労働者と短時間労働者の均等待遇が確保されている。本調査では、12名の回答者が、勤務日数と勤務時間を調整し、地域のサポートを活用して子育てと就労のバランスをとり、高いウェルビーイングを示した。短時間労働者への均等待遇が社会に浸透しているオランダのあり方は、労働人口減少が見込まれる日本にとって重要な示唆となる。 さらに同年度、日本(東京)で、ワーク・ライフ・バランスを考えるフォーラム「ガールズ・トーク:ワーク・ライフ・バランスのための世代間コーチング」を開催した。本フォーラムでは、筆者が日本のワーク・ライフ・バランス政策、オランダ調査で得た知見を発表するとともに、4名のワーキング・マザー(ジャーナリスト、企業家、社会福祉士、国際協力専門家)がそれぞれのワーク・ライフ・バランスについて発表し、将来育児に携わる20ー30代の参加者と交流した。本フォーラムでは、仕事を楽しみ、仕事と家庭の両立を支える環境を整え、ポジティブでいることなどが、ワーキング・マザーのウェルビーイングに繋がることが強調された。 アメリカでは、子育て支援政策が十分でないにもかかわらず、先進国の中で女性管理職の割合が最も高い。これは、子育てを外注し育児への家族的責任を縮小させていることから可能となっていると考えられる。一方、オランダでは均等待遇の短時間労働を普及させることで、子育ての外注と家族的責任のバランスをとっている。本調査から、短時間労働者の待遇均等化の制度化を急ぎ、子育てへの家族的責任を緩和する政策が日本にとって重要と考える。
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