研究課題
巨大な開口部をもつフラーレンC60誘導体に、高圧の酸素ガスを室温で接触させることにより、酸素分子を内包させた。得られた化合物を素早くNaBH4と反応させることにより、開口部のカルボニル基の一つをアルコールへと変換させ、内包された酸素分子の放出を抑制することに成功した。このように合成された酸素分子内包開口体は、HPLCにより単離され、その物性評価をおこなった。この化合物は、内包された酸素分子に由来する常磁性をもつことが、1H NMRならびにESRスペクトル測定から明らかとなっている。研究期間の延長により、本年度は、その発光特性を詳細に評価した。溶液中に溶解した酸素分子は、励起状態にある物質からのエネルギー移動により近赤外領域に幅広なリン光スペクトルを1272 nmに示すことが知られている。一方、この分子錯体では、可視光を照射することにより、鋭い3つのリン光発光を示すことが明らかとなった。このリン光発光は、溶液中だけではなく、粉末サンプルを可視光照射した場合においても観測された。また、発光スペクトルでは、3つのうち2つの発光帯はより長波長側に観測された(1280ならびに1290 nm)。この挙動を明らかにするために、DFT計算を行った。その結果、内包された酸素分子は、フラーレン骨格の影響により束縛された振動モード(それぞれ、56, 65, 81, 117, 136 cm-1)を持っており、この振動エネルギーが関与したものが観測されたものであることが明らかとなった。
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Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 56 ページ: 4261-4265
10.1002/anie.201701212
巻: 56 ページ: 6488-6491
10.1002/anie.201701158R1