本研究は、フォトレドックス触媒作用として一般に認知されるようになってきた可視光を駆動力とする一電子移動反応を基盤とした窒素中心ラジカル種の効率的発生と、そのラジカル的アミノ化反応への利用を目的に進めてきた。平成27年度には、1-アミノピリジニウム塩誘導体からフォトレドックス触媒作用によって効率的に窒素ラジカル種を発生できることを見出した。またアミノ基窒素の置換基が重要であり、p-トルエンスルホニル基のものは非常に反応性がよいことも分かった。一方で汎用的なアミド基を有するピリジニウム塩ではほとんど反応が進行しなかった。窒素上の置換基はラジカル種の反応性をチューニングするうえで重要であり、平成28年度は、様々な置換基を有する窒素ラジカル種の発生をめざし、触媒システムの設計を行った。 1-イミノピリジニウムイリドに強力なルイス酸を作用させると前駆体を活性化でき様々な置換基を有する窒素中心ラジカル種の発生が可能になると考え、フォトレドックス触媒とルイス酸触媒が協同的に作用する触媒システムを設計した。その結果、多様な窒素ラジカル種の発生を経由したアルケンのアミノヒドロキシ化反応を実現した。本研究成果はTetrahedron誌に発表した。本知見は、窒素ラジカルの発生及び反応性をルイス酸や窒素上の置換基によって制御できる可能性を示唆しており、今後、ラジカル的アミノ化反応を開発するうえで非常に重要な知見であると考える。
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