研究課題/領域番号 |
15K14111
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
久保 紘 静岡理工科大学, その他部局等, 教授 (30029904)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ω相転移の第1原理計算 / Landau自由エネルギーのq-点群表現 / 不均質相転移の自由エネルギー / ヘテロ構造揺らぎ理論確立 / オメガ相転移のkinetics / 構造揺らぎの梯子登りモデル |
研究実績の概要 |
分子モーター程の「物質内の微小領域で起こっている温度揺らぎ」に起因する現象の仕組みを学 び、その上で「ものづくり」の新しいコンセプトを創出し、技術革新を引き起こすことを目的とする。本研究では、 金属系バイオマテリアル材料Zr-20Nb 合金におけるω相転移のヘテロ構造揺らぎを対象としている。 電子・原子スケールでの構造相転移解析では、ω相転移をphonon-mode変態とBain-mode変態に分解して、各要素ごとの熱力学ポテンシャルを算出し、最後にphonon-Bain 相互作用を考慮して、「全エネルギーを最小にする格子変位を見出す」という物理モデル(T-mode理論)を提唱した。この物理モデルは、第一原理計算で行う構造最適化計算に対応している。計算にあたっては、無限サイズの無秩序な原子配置を有限サイズに還元する技法を採用して、VASPコードを用いて行った。Zr-20%Nb合金のω相転移解析のうち、変態相の結晶構造、局所熱揺らぎと活性化エネルギー、変態経路解析が可能となった。 メソスコピック・マクロスコピックスケールでの構造相転移解析では、第一原理計算のガイドラインとなるLandau型自由エネルギーの展開係数に関する対称性理論を、q-点群解析から導き出した(Physcal Rev. に投稿中)。また、弱い揺らぎを許す平均場近似をベースにして求めた全エネルギーをLandau型にTaylor展開して、Landau型自由エネルギーを不均質相転移に適用できる形とした。上記、不均質相転移の典型例であるZr-20%Nb合金の前駆ω相転移を取り上げて、ヘテロ構造揺らぎ相転移のkinetics理論を構築し、ドメインの時間発展、分布、局所相転移の量、を求めるとともに、臨界現象の解析を行った。 以上温度揺らぎに起因する現象の仕組みを学 び、その上でものづくりの新しいコンセプトを創出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、電子・原子スケールでの構造相転移解析を結晶群論の立場から、 1) 均質相転移 T-mode 理論の定量計算による 実証、2) T-mode理論の不均質相転移への拡張、3) Landau自由エネルギー展開係数の直接計算 という3テーマに分割している. 1)~3)を通じて、研究が概ね順調に進展している理由は、提唱した構造相転移解析モデル(T-mode理論)が、第一原理計算で行う構造最適化計算に対応しているというのが、第1の理由である。このため、擬ポテンシャル法を用いてKhon-Sham 方程式を解くVASPやABINITなど、既存の計算コードが使用できることになった。 後2者の、2) T-mode理論の不均質相転移への拡張と3) Landau自由エネルギー展開係数の直接計算 については、第一原理計算のガイドラインとなるLandau型自由エネルギーの展開係数に関する対称性理論を、q-点群解析から導き出したこと(Physcal Rev. に投稿中)、また、弱い揺らぎを許す平均場近似をベースにして求めた全エネルギーをLandau型にTaylor展開して、Landau型自由エネルギーを不均質相転移に適用できる形としたことも、研究を順調に推進させた理由と考えている。 平成27年度の研究計画に入っている、もうひとつのテーマ、4)ヘテロ構造揺らぎ相転移の理 論解析では、点欠陥の時間発展方程式[M. Kiritani, J. Phys. Soc. Japan, 35, 95,(1973)]を拡張して、梯子登りモデルを構築し、マスター方程式を定式化できたことが、順調な研究推進を生んだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に記した、5)セントラルピークの理論確立と、定量計算及び 6)新ものづくりコンセプトの創出に軸足を移していく。 後者の新ものづくりコンセプトの創出では、今回、骨代替金属系バイオマテリアル材料Zr-20Nb 合金におけるω相転移のヘテロ構造揺らぎを対象としているが、本研究の手法は、ジーゼルエンジンの開発で主体的役割を担ったピエゾ素子や、チップコンデンサーなど、誘電体材料の開発にそのまま適用できるものであるので、BaTIiO3系誘電体材料の開発にも繋げていきたいと考えている。このため、5)、6)の研究を進めると同時に、誘電体材料の開発を目指して、1)~4)の研究開発も進めていく。 研究上、コンピューター計算をする必要があり、従来は東北大学と名古屋工業大学のコンピューターを専ら使用したが、今後は大阪大学のコンピューターを主に使用する予定である。cpuの割り当て、私の所属している大学からの距離、便利さ、advisorなどを考慮した。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要がなかったため、人件費・謝金を支出しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
大阪大学でのコンピュータを使用した計算に関わる、人件費・謝金として使用する。
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