研究実績の概要 |
生体分子モーター程の「物質内の微小領域で起る温度揺らぎに起因する現象の仕組みを学び」、その上でものづくりの新しいコンセプトを創出することを目的としている.Zr-Nb 合金の、温度揺らぎに起因する準安定ω相転移を対象とし、相転移の機構を明らかにすることから始めた. このため、順次、「相転移の電子・原子スケールでの熱力学解析」→「相転移kinetics解析」→「中性子線回折による相転移の評価」という手順で研究を重ねてきた. H28年度は、予定されていた研究項目である「中性子線回折による相転移の評価」を行った. このうち、セントラルピーク解析理論の確立では、前年度(H27年度)の研究成果を踏まえて、準安定ω相ドメインの時間発展方程式を回折理論に持ち込み、セントラルピークのエネルギースペクトルを正確に且つ詳細に説明した. 定量的な評価は、S. Moss等が測定した Zr-20%Nb 合金の非弾性中性子線回折のセントラルピークについて行った(S. C. Moss, D. T. Keating, and J. D. Axe, Neutron study of the beta-to-omega instability, edited by P. S. University, Conference on Phase Transitions 1973 (Pergamon Press, Oxford, 1973) pp.179-188).準安定ω相の生成に伴って現れる非弾性中性子線回折のセントラルピーク強度及びその半価幅は、準安定ω相ドメインのサイズとその分布及び生成・消滅の緩和時間の関数として正確、詳細に記述された. 論文にまとめて、Phys. Rev. Bに投稿中.
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