研究課題
本研究では、主に肺腺がんに注目して、同時に2つのDriver Oncogeneが1つのがん細胞中に共存しない理由、つまりは、Driver Oncogeneからのシグナルが多すぎても「がん」にとって不利な理由を明らかにし、がんが1つのDriver Oncogeneに依存する(多すぎるシグナルをOncogeneシグナルを受け入れない)分子機構を明らかにし、その分子機構を逆に弱点と考えて新しい治療標的の探索へとつなげていくことを目的として進めてきた。28年度は、27年度に作製したROS1融合遺伝子などのOncogeneを発現誘導できるウィルスベクターをより強力にタイトにドキシサイクリンの添加により発現調整できるものに変更し、強力な発現誘導系を確立した。さらに、ROS1融合遺伝子を発現し、その活性に生存が依存するBa/F3-CD74-ROS1細胞を用いたmutagenesisアッセイ(強力な変異原物質をさらすことで人工的に変異を導入し、薬剤耐性等に係る遺伝子変異等を誘導・同定する方法)を行うことで、あるROS1融合遺伝子の変異が、ROS1融合タンパク質からの細胞増殖シグナルを過剰活性化するだけでなく、驚くことに細胞死をも誘導した。このことは、強力にROS1融合遺伝子を発現制御できる系で同じ変異体を野生型CD74-ROS1にさらに過剰発現させるだけでも再現され、強力すぎるROS1からのOncogeneシグナルが細胞死を誘導してしまうことを明らかにした。さらに、リン酸化プロテオーム解析と、薬剤ライブラリーを用いたスクリーニングから、その経路(細胞死誘導)に関わる因子を複数同定した。全く異なる2つ以上のDriver Oncogeneを過剰発現(過剰活性化)することで増殖抑制がかかることも肺がん細胞株から確認できたが、その分子機構の詳細については今後新たな研究としてさらなる検討を試みたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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