研究課題
菌従属栄養植物の中には、樹木と共生する難培養性の外生菌根菌から栄養を得て生育する種が存在する。本研究は、このような特性を持つ希少野生植物の生息域外保全に向け、人工培地上で培養が困難な外生菌根菌について、樹木に菌根形成させた状態で培養・保存する技術の開発を目的とする。さらに、樹木・菌根菌・菌従属栄養植物の3者共生系構築を目指す。28年度は菌従属栄養植物の材料として、外生菌根性で難培養性の担子菌類と菌根共生することが知られているヒメノヤガラとマヤラン(ラン科)をおもに用いた。ヒメノヤガラの根より菌根菌の菌糸塊を取り出し、樹木苗(モミ)の根に直接接種する手法を試みた。その結果、3ヶ月後に外生菌根と同様の形態的特徴を示す菌根が形成された。マヤランについては菌根形成効率を向上させるため、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムを用いて菌糸コイルを根に固定する方法の改良を試みた。さらにモイワランにおいては、根から分離された菌根菌を単離培養し菌の子実体を形成させることに成功した。形態と分子データの双方により,これがナヨタケ科のCoprinellus属であることを明らかにした。またこれらのCoprinellus属の菌糸をモイワランに接種したところ、根茎形成が誘導される反面、根は誘導されなかった。モイワランにおいてはもっぱら根茎が菌根の形成部位であることから、特定の菌が特定の器官形成を誘導することを介して、植物の菌従属栄養性に影響を与えることが示唆された。
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Mycoscience
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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