研究課題
本年度は、皮質骨の厚さ、筋重量、筋線維長を求め、これらと筋骨格発達指標との相関を明らかにし、古人骨生業形態の精密復元に貢献できる手法開発を推し進めた。材料と方法:オトナメスのカニクイザル(佐賀大学医学部保管、10%ホルマリン浸漬標本)の右上肢を対象にした。これらの個体は生前、個別ケージの同一環境で飼育され、他研究機関で実験後に死体として提供されたものである。よって本研究は実験殺を含まない。三角筋の重量および筋線維長(筋重量は筋力と相関し、筋線維長は筋収縮速度能を表す)を計測した。筋線維長はランダムに6か所を計測しその平均値を用いた。また、三角筋粗面における皮質骨の厚さを計測した。筋骨格の発達指標については、通常MSMs(筋骨格ストレスマーカー)を用いるが、個体間によってその差を見出すことが困難だったため、三角筋粗面における前方および後方への突出度を骨幹部との角度によって表し、これを筋骨格発達指標とした。筋重量は体重で、皮質骨厚および筋線維長は体重の1/3乗で除算し、標準化した値を用いた。筋骨格発達指標である前後へのそれぞれの突出角度と、標準化した皮質骨厚・筋重量・筋線維長との関係について回帰分析を行った。結果:筋骨格の発達指標として考案した「前方への突出度を表す角度」と「体重で標準化した筋重量」が、三角筋粗面近位部においてのみ統計学的に有意に負の相関を示した。その他の組み合わせのものは、いずれも統計学的に有意な相関を示さなかった。考察:対象としたカニクイザルは、同じ環境で飼育された同一の性別、そして年齢は老齢でもワカモノでもないオトナ個体であることから、年齢の近い同性のオトナ同士では、筋の発達指標において顕著に差が見出せる骨部位は限定的である可能性が示唆された。成長・加齢といった現象による骨表面の形態変化や、部位による違いなど、今後更なる検討を要する。
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