習慣的多量飲酒による大腸発がんのリスク増大への腸内細菌やアセトアルデヒド(AA)代謝の関わりについて手がかりを得るため,アルコール依存症患者(ア症患者)と非患者の糞便の菌叢構造を比較した.また糞便分離微生物のエタノール代謝能を好気的条件下で評価した.菌叢構造の個体間多様性はア症患者群で有意に増大しており,当初の予想に反して,患者の糞便中のAA濃度は非患者の同濃度よりも有意に低く,またエタノールからのAAの生成速度も,ア症患者の糞便の方が有意に小さいことがわかった.以上の結果から,習慣的多量飲酒により惹起される大腸内酸化ストレスが,アルコール関連大腸発がんのリスク因子となるモデルを提案した.
|