熱帯泥炭湿地は、残された土地資源のひとつであるが、排水を伴う農地化によって泥炭として蓄積された大量の有機炭素の無機化が促進されることが懸念されている。しかし、ヤシ栽培下土壌でCO2フラックスに変化が見られなかったこと等から、安定な有機物も多く存在する可能性が推察された。そこで、熱帯泥炭が恒常的に難分解性炭素を含むことの確認を目的として、マレーシアの各種森林およびヤシ栽培圃場の泥炭土壌を分析した。その結果、難分解性腐植物質は検出されず、ブラックカーボンは全炭素の1%未満であり、光分解前後の13C NMRスペクトルに有意な差がなかったこと等から、選択的に残留する有機成分の存在は確認されなかった。
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