研究実績の概要 |
FGF21およびPGC-1αの3’-UTRをルシフェラーゼ遺伝子の3’-UTRに挿入したレポーターを作製し、約1200個のRNA結合タンパク質 (RBP)遺伝子やジンクフィンガータンパク質などを含んだ、RBPライブラリーを用いて、ハイスループットスクリーニングを行い、FGF21およびPGC-1αの発現を変化させる遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、FGF21およびPGC-1α両方のレポーター活性を低下させる遺伝子として、zinc finger型のRNA結合タンパク質であるRBP-1を同定した。本遺伝子について、CRISPRを用いて本遺伝子のノックアウトマウスを作製した。RBP-1ノックアウトマウスは、問題なく発生し、出生後の体重についても変化はなかった。しかし、RBP-1ノックアウトマウスを用いて高脂肪食負荷による肥満モデルを行った結果、RBP-1ノックアウトマウスの体重増加は、野生型と比べて減少することが分かった。以上の結果から、RBP-1がFGF21やPGC-1αの発現制御を介して代謝に関与している可能性が示された。また転写後制御因子の標的遺伝子を同定する新しいシステムの開発に成功した。ルシフェラーゼ遺伝子の3’-UTRに、約5000の全長cDNAを挿入したレポーターライブラリーを作製し、興味あるRBPやmiRNAなどとともに細胞へ導入することで、レポーター活性からそのターゲット遺伝子をスクリーニングするシステムである。これを用いてmiRNAの標的遺伝子の同定に成功し(Ito et al, PNAS 2017; Mitsumura and Ito et al, Blood Adv 2018)、またRBPへ応用可能であることを明らかにした。本システムを用いてRBP-1の標的遺伝子の解析を行い、RBP-1が炎症性サイトカインの発現を促進することを明らかにした。
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