研究課題/領域番号 |
15K15197
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究分担者 |
大山 陽子 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 特任助教 (20583470)
竹之内 和則 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 医員 (30646758)
清水 利昭 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (50468055)
山口 宗一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20325814)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | erythrocyte / eryptosis / programmed cell deat / VEGF-A / B細胞 / lymph node / phagocytosis / iron metabolism |
研究実績の概要 |
我々はこれまでの一連の研究において免疫B細胞特異的VEGF-A過剰発現マウスにおける免疫寛容誘導の存在を報告してきた(J immunol, 2010)。この非感染症マウスモデルのリンパ節において血球貪食が観察され、感染状態のみならず、非感染状態における血球貪食と免疫調節機構の機能的関連の存在を示唆するデータを性差および加齢との関連も含めて蓄積してきた。今年度は非感染症状態における低次元の血球貪食と免疫調節機構ならびに鉄代謝系の関連の存在を明らかにするとともに、性差医学、加齢医学への関与について検討した。免疫応答の一つのpathwayである免疫B細胞からのVEGF-A発現のup-regulationが持続することによりマウスの個体は免疫寛容の表現型となることを、13-14週齢の♂マウスにおいて報告してきたが、これらの個体応答が血球貪食系・鉄代謝系・血管/リンパ管の脈管系の動態と連動していることを検討した。更に、これらの個体応答の“性差による差異”と13-14週齢と54‐55週齢のマウスを比較することにより“加齢による変化”を検討した。血球貪食系のデータとして、54-55週齢のメスマウスにおいて、腸間膜リンパ節における血球貪食の存在をヘモジデリンの沈着部位とマクロファージの染色部位の一致として確認した。免疫系に関する基盤データとして、13-14週齢のオスマウスにおいて免疫寛容の個体環境となることを既に報告した。鉄代謝系のデータとして54-55週齢のメスマウスにおいて、鉄欠乏性貧血にcompatibleな表現型を示すことを確認した。脈管系におけるデータとして、13-14週齢のオスマウスにおいて、本モデルマウスの腸間膜リンパ節においてリンパ管新生・血管新生およびリンパ節に特異的脈管構造であるHEV (high endothelial venule)の増加を報告してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年計画の初年度であり、既に作出済みである免疫B細胞特異的VEGF-A産生tgマウスの解析を行った。本tgマウスのVEGF-A産生量はコントロールマウスの4倍程度であり生理的動態の考察の範囲内にある。解析項目は4つの柱である①血球貪食系の解析 ②免疫応答系の解析 ③鉄代謝系の解析 ④脈管系の解析より構成される。これらの4つの生体システムが相互応答してホメオスターシスをバランスしていることを検討した。相互応答の証明には上記の解析を可能な限り同一マウス個体にて行うことでアプローチした。加齢によるこれらの生体システムへの影響を調べることから、本年度は13-14週齢のマウスの解析を行った。平成28年度には54‐55週齢のマウスの解析を行ない、データを比較する予定である。また、4つの系の性差も解析することから、全ての解析をオス・メス双方にて行う。
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今後の研究の推進方策 |
血球貪食と免疫系・鉄代謝系の生理的相互応答機構の証明にあたり、その機序の理論的説明において、核のない細胞(赤血球・血小板)におけるプログラム細胞死の存在は必須の必要条件であると考えられた。そこで2007年、血小板におけるアポトーシスシグナルのプロセスがpro-apoptoticとanti-apoptotic分子の脱制御 (molecular clock)として報告された (Mason,KD, et al. Cell 2007)。本報告は核を有さない細胞のプログラム死(アポトーシス)の概念の最初の報告であり、そして同じく核のない赤血球のアポトーシスがeryptosisとして提唱された。Eryptosisの概念は赤血球のアポトーシス (eryptosis)から血球貪食への理論を展開する上で極めて重要であり、我々の提案の妥当性をサポートする知見と考えられる。これらの、核の無い血小板と赤血球のプログラム細胞死の知見を今年度の研究に組み入れて検討を重ねて行く予定である。
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