研究課題/領域番号 |
15K15491
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田中 真二 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30253420)
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研究分担者 |
中山 恒 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451923)
藍原 有弘 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (90451939)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 癌 / 幹細胞 / 制御性T細胞 / 免疫チェックポイント / 発癌 / ゲノム編集 / トランスジェニックマウス / トランスレーショナルリサーチ |
研究実績の概要 |
本研究は癌幹細胞に基づいた生体内ニッチ制御分子の基礎解析と、臨床応用を目指した特異的治療開発という二つの視点を特徴とする。 まず膵腫瘍臨床検体およびヒト膵腫瘍細胞を解析した結果、約1%の癌幹細胞分画を検出した。ヒト膵腫瘍細胞から癌幹細胞分画を抽出して、高い自己複製能と浸潤能を持つことを確認した。マウス生体内では顕著な造腫瘍性および転移能を示し、その特異的高発現分子として細胞外アデノシン産生酵素CD73を同定した(Int J Oncol 2016)。CD73は制御性T細胞に高発現していることが知られており、アデノシンレセプターA2AARを介して宿主免疫を抑制し生体内ニッチを制御するメカニズムが示唆された。またCD73阻害剤adenosine 5′-(α,β-methylene) diphosphate (APCP)は癌幹細胞の自己複製能、浸潤能を強力に阻害すること、APCPを投与したマウスモデルでは癌幹細胞の造腫瘍性および転移能が抑制されることを証明した。膵腫瘍の臨床検体を解析した結果、CD73高発現を確認し、周囲組織への腫瘍浸潤と有意な相関を認めることを明らかにしており、新たな治療標的として有望であることが示唆された。 以上の研究成果に基づいて複数の幹細胞性関遺伝子および発癌関連遺伝子を抽出し、各遺伝子に対してCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、各種ノックアウト腫瘍細胞を作成した。今後、それぞれのノックアウト腫瘍細胞による生体内腫瘍・転移モデルを作成し、生体内ニッチ制御分子群を解明する。さらに幹細胞性トランスジェニックマウスを用いて、宿主免疫システムにおける新たな解析を展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
膵腫瘍臨床検体およびヒト膵腫瘍細胞の癌幹細胞分画から細胞外アデノシン産生酵素CD73を同定した。CD73は制御性T細胞などに重要な機能を持つが、CD73の特異的抑制剤は癌幹細胞を選択的に阻害することが明らかとなった。生体内ニッチにおける免疫逃避メカニズムが示唆されたことに加え、複数の幹細胞性関遺伝子および発癌関連遺伝子を抽出しており、計画以上の画期的な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
複数の幹細胞性関遺伝子および発癌関連遺伝子についてCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、各種ノックアウト腫瘍細胞を作成しており、統一した生体内モデルによってニッチ制御分子群を解明する方針である。CD73は免疫チェックポイント分子PD-1を発現亢進させる機能が報告されており、幹細胞性トランスジェニックマウスを用いて免疫システムにおける新たな解析を展開している。
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次年度使用額が生じた理由 |
癌幹細胞性と生体内ニッチ解析において計画以上の画期的な結果が得られており、研究成果に基づいて複数の幹細胞性関遺伝子および発癌関連遺伝子を抽出することが可能となった。 それぞれの遺伝子についてノックアウト腫瘍細胞作成を先行し、次年度に統一して解析する方針としたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
複数の幹細胞性関遺伝子および発癌関連遺伝子に対して、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて作成した各種ノックアウト腫瘍細胞の検証解析を進める。 検証した各種ノックアウト腫瘍細胞を用いて、統一して生体内機能(造腫瘍性、転移能など)を解析し、同時に治療実験も併行する方針である。
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