研究課題/領域番号 |
15K16228
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中本 真理子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (40722533)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大豆 / イソフラボン / 認知機能 / エストロゲン受容体 / 遺伝子多型 / 中高年者 / 長期縦断疫学研究 / 栄養疫学 |
研究実績の概要 |
本研究は食事を介した認知機能の低下予防を目的とし、15年以上実施されてきた地域在住中高年者を対象とした長期縦断疫学調査から、大豆製品・イソフラボン摂取と認知機能との関連について検証するものである。食事量は3日間の食事記録調査から算出し、認知機能は認知機能障害スクリーニング検査(MMSE)を用いて評価した。本年度は、予定していた縦断的解析のうち、豆類や大豆製品、イソフラボンの摂取量の経年変化について検討を行い、地域在住中高年者の豆類摂取の推移を性別に評価した。40~79歳までの対象者を4歳毎に区切って12年間の摂取量の経年変化を評価したところ、豆類について男性ではどの年齢群においても変化がなかったのに対し、女性では40~52歳までの各年齢群では増加した一方で72歳以降の年齢群になると減少する特徴がみられた。また、エストロゲン受容体遺伝子型(ESR1およびESR2)の違いによる豆類、大豆製品、イソフラボンの摂取と認知機能の低下(MMSE27点以下へ低下)との関連について検討するために、第2次から第7次調査まで参加している対象者において、一般化推定方程式を用いて解析を行った。その結果、男性では遺伝子型の違いによって豆類、総大豆製品、総イソフラボンの摂取と認知機能低下との関連に違いは見られなかったものの、女性ではESR2の遺伝子型の違いにより効果が異なる結果が得られ、ESR2に変異を有する女性において豆類、総大豆製品の摂取量が1標準偏差分増加する場合の認知機能低下に対するオッズ比はそれぞれ0.65(p<0.05)、0.57(p<0.05)であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産休・育休からの復帰による研究再開後の研究実施計画では、平成30年度は、遺伝子多型別の豆類・大豆製品摂取と認知機能との関係について、横断的・縦断的に検討することを計画しており、その検討を行うことができた。その結果、男性では遺伝子型の違いによって豆類と認知機能低下(MMSE27点以下へ低下)との関連性に違いがないが、女性ではエストロゲン受容体のうちESR2に変異がある場合に豆類、総大豆製品の摂取量が増加すると認知機能低下リスクが有意に減少するという結果を得た。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度で検討した豆類、大豆製品、イソフラボンの摂取量の経年変化の特徴と供に、遺伝子型の違いによる豆類、大豆製品、イソフラボンの摂取と認知機能低下や知能との関連についてより詳細な検討を行い、解析結果についてとりまとめる。これらの解析結果を踏まえた上で、どのような人がどのような大豆製品をどの程度摂取することによって、その後の認知機能を維持する、あるいは認知機能低下を予防することに有効なのかを疫学的に検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の途中に産休・育休から復帰し、研究を再開したため、本年度予定していた学会への参加、購入予定の物品の購入が一部できていない。そのため、計上していた旅費等の使用計画、購入予定の消耗品等に変更が生じたことから、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の平成31年度での使用計画は以下のとおりである。 当該年度に購入できていなかった本研究に関連するゲノム関連図書、ならびに資料整理用の器具を購入する設備備品費として使用する予定である。また、消耗品費としては、次年度以降のデータ解析や成果発表等で必要となるソフトウエアを追加で購入するために使用する。さらに、研究を発展させるために、解析を行うための旅費などに使用するとともに、本研究に関連した成果を原著論文として投稿予定であり、これらの英文校正および論文投稿費用として使用する。
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